生き残りへ辛うじて挑戦権を得たルネサス:再編進む半導体業界の中で(1/3 ページ)
ルネサス エレクトロニクスは2016年9月13日、Intersilを約3274億円で買収すると発表した。製品面、事業面で補完関係にあるIntersilの買収で、ルネサスは半導体業界で続く再編の中で、生き残りを図ることになった。ただ、懸念材料もある。
成長のための手元資金3900億円
2016年9月13日、ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は、米国のアナログ半導体メーカーIntersilを32億1900万米ドル(約3274億円)で買収すると発表した。
2013年の第三者割当増資(1500億円)などで獲得した手元資金約3900億円をどこに投資するのか、ここ数年注目されてきた中で、ルネサスが選んだ投資先は、中堅アナログ半導体メーカーだった。
黒字転換も、成長見えぬ状況続く
2010年の設立以来、赤字体質から脱却できなかったルネサスは、2013年に産業革新機構などの出資を受け、元オムロン社長の作田久男氏をCEO(最高経営責任者)に迎え、本格的な構造改革に着手。当時、売上高の35%程度を占めた“成長が見込めない事業”からの撤退を決め、従業員数、工場も半減させてきた。そうした大胆な構造改革を実施してきた結果、2015年3月期、2016年3月期と2期連続で二桁パーセントの営業利益率を確保し、会社設立以来の大目標だった“黒字体質”へと転換した。
しかしながら、売り上げ規模に関しては、不採算事業からの撤退影響などが響き、縮小の一途をたどる。設立初年度(2011年3月期)は1兆1379億円あった売上高は、2015年3月期は7911億円まで減少し、世界半導体市場シェアも10位圏から脱落した。
2015年3月期に営業利益率13%超の達成を受け、構造改革成し遂げた作田氏は後任に成長を託す形で退任。後任のCEOには元日本オラクル社長の遠藤隆雄氏が就き、売り上げ成長を伴う本格的な成長路線への転換が期待されたが、遠藤氏は半年でCEOを辞任。成長路線への転換は、頓挫した。
成長遅れる中で進んだ業界再編
その間、ルネサスを尻目に、競合は積極的な投資を展開した。Infineon TechnologiesはInternational Rectifierを、NXP SemiconductorsはFreescale Semiconductorを、それぞれ買収。この2件の買収により、ルネサスは長く守ってきた“車載半導体シェア首位”の座から陥落し“車載半導体シェア3位”にまで後退。成長路線への転換の遅れ以上に、再編が進む半導体市場で存在感を失い続けてきた。
そうした中で、ようやく遠藤氏の実質的な後任CEOとして、カルソニックカンセイCEO、日本電産副社長を歴任してきた呉文精氏が2016年6月に就任。成長路線への転換に向け再スタートを切った。
呉氏は就任当初から、約3900億円の手元資金を、開発費と共に、企業の買収や提携に使用することを示唆。買収、提携先としては「われわれと組んで競争力が出るところ」とし「市場で売り出されている企業、事業を買わない」と戦略的な買収、提携策を仕掛けると話していた。
そして、就任から3カ月も経過しない中で呉氏は、手元資金の大半に相当する3274億円を使い、Intersilの買収を決断した。
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