MEMS発振器が大きく進化! 100ppbのTCXOが登場:情報通信市場の水晶代替へ(1/2 ページ)
メガチップス傘下のSiTime(サイタイム)は、MEMSを使用した発振器として、±100ppbの周波数安定性を持つ超高精度温度補償型発振器(Super-TCXO)「Elite Platform」を発表した。2017年上半期からサンプル出荷を開始するという。
従来の5ppmから0.1ppmへ進化
メガチップスの完全子会社であるSiTime(サイタイム)は2016年9月26日、MEMS発振器として超高精度温度補償型発振器(Super-TCXO)「Elite Platform」を発表した。これまでMEMS型TCXOの周波数安定精度は±5ppm程度だったが、最高±100ppbの精度を実現した。
「発振器の最大市場である情報通信機器市場向けの本格的な第1弾製品だ――」
SiTimeのマーケティング担当Executive Vice PresidentであるPiyush Sevalia氏は、今回、発表したElite PlatformがこれまでのMEMS発振器とは一線を画し、MEMS発振器にとってまだまだ未開の地である情報通信機器市場を切りひらく製品だと強調する。
Elite Platformは、OCXO(恒温槽付水晶発振器)並みの周波数安定精度を誇るSuper-TCXOに位置付ける。2017年上半期にサンプル開始予定のElite Platform第1弾製品群の1つである1M〜60Mz対応の「SiT5356」、60〜220MHz対応の「SiT5357」では、−40〜+105℃の温度範囲で±100ppbという周波数安定性を誇る。さらに「第1弾製品のサンプル出荷後6カ月をメドに、±50ppbの周波数安定性を持つ製品もElite Platformとして投入する」(Sevalia氏)計画だという。
温度変化、振動への強さを前面に
OCXOクラスの±100ppbの周波数安定性をMEMS発振器で実現したことにより「情報通信機器が水晶発振器で抱えていた多くの課題を解決できる」とし、MEMS発振器特有の利点を前面に出して、水晶発振器の牙城を崩していく。
MEMS発振器特有の利点とは、耐振動性や急速な温度変化に強いなどの点だ。耐振動性は、水晶TCXOの20倍以上となる1g(重力加速度)当たり0.1ppb。水晶特有のアクティビティーディップやマイクロジャンプは発生しないとする。
温度変化に対しては、2つのMEMS発振子を使った温度検知システムにより水晶TCXO比40倍の温度追従性を持ち、1秒間で10℃という急速な温度変化率でも1〜5ppb/℃の周波数スロープ(ΔF/ΔT)性能を実現する。
Sevalia氏は、「線路脇の基地局では、鉄道車両が通る振動で発振器の精度が失われ、一時的にサービスが停止するために振動対策が不可欠だ。Elite Platformであれば、そうした対策をせず、安定したサービスを実現できる」とする。加えて、「水晶のSuper-TCXOでは、冷却ファンのオン/オフ程度の小さな温度変化でも発振周波数は振れるため、機器設計に多くの制約を生む。Elite Platformであれば、さらに急速な温度変化でも周波数は安定しており、熱源近くに配置することもできる」と言い切る。
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