笑う人工知能 〜あなたは記事に踊らされている〜:Over the AI ――AIの向こう側に(3)(3/8 ページ)
AI(人工知能)に関する記事は、メディアにあふれ返っています。私は「これらの記事では“人工知能”のことがさっぱり分からん」との結論に至りましたが、では、人工知能を技術的に理解している人は実際どれだけいるのでしょうか。ざっくり推定すると、なんと、例えば「深層学習」を理解している人は50万人のうち4人、という結果を得たのです。
江端仮説
さて、ここから、思い切った江端仮説を発動します。
この32万人の中から、"人工知能技術"に、わずかでも携った人間の数、そして、さらには、今、まさに流行している「深層学習 ―― Deep Learning」について理解している者の数を推定します。
まず、Google検索を使って、以下のキーワード検索の結果の数を読み取りました。
- キーワード:"main" "for" "i++" "int" "double" "プログラム" → 検索件数4万7700件
この検索は、いわゆるプログラムのソースコードが開示されているWebのページの数を数え上げることを目的としたものです。上記の5つの文字列は、コンピュータプログラムで使われる文字列で、最後に"プログラム"を付けたのは、日本語のページに限定するためです。
さらに、
- (上記のキーワード)+"人工知能" または "AI" → 検索件数 1390件
- (上記のキーワード)+"深層学習" または "Deep Learning" → 検索件数 153件
となりました。
上記で、私が試みたことは、Webで公開されているソースコード数に対して、"人工知能"、あるいは"Deep Learning"に関係するソースコードを掲載しているWebのページ数を数え上げることでした。
ソースコードが開示されている、ということは、「そのソースコードのアルゴリズムの理解に至っていると解釈できる」と考えました。もちろん、ソースを公開しない(会社の業務であれば当然公開できない)人もいるでしょうが、全体として公開する人/公開しない人の比率は同程度であろうと割り切りました。
これらの数値を参考にして導き出した結果は、以下の通りです。
"人工知能技術"に対して技術的な知識を持つ人は約9200人、"Deep Learning"に関していえば1037人程度です。これは、これは日本の人口から考えると1万4000人に1人のみが「人工知能技術"を理解している」ことになり、12万人に1人のみが「"Deep Learning"を理解している」ことになります。
『あの毎日のように掲載される膨大な"人工知能"の記事の量に対して、たったこれだけの人間?』と思ったので、念のため別の方向からもチェックしてみました。
Webサイトでざっと調べてみたのですが、人工知能学会では3800人、日本知能情報ファジィ学会では約1100人の会員を有しているようです。また、私のように学会に入っていない人間や、他の業務で"人工知能技術"に関わらない人間もいます。
これらの他、実際に"人工知能技術"の"プログラミング"に係わっている人間も考慮すると、9200人というのは、それほど外れていないと思います。
そして、"Deep Learning"関連の記事の、あの空々しいまでのコピペ感 ―― 『全然知らないけど、分かっている風に書きましたよ感』 ―― を考えると、日本に1000人しか説明可能な人がいない、というのも、あながち外れていないのではないと思うのです*)。
*)私は「1000人でもまだ多い」と感じる。
以上、今回の検討でも、昨今の人工知能ブームは、"人工知能技術"を分かっていない人たちが、世間を踊らせ続けているものである ―― という、私の所感は、一層、強化されてしまいました。
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