仕掛け続ける新興商社、次の狙いは量産とIoT:半導体商社トップインタビュー コアスタッフ(1/2 ページ)
再編が進み、急速に変ぼうを遂げつつある半導体業界。半導体製品を扱う商社にも変化の波が押し寄せつつある。そうした中で、EE Times Japanでは、各半導体商社のトップに今後の戦略を問うインタビュー企画を進めている。今回は、売上高30億円超という事業規模ながら多彩なビジネスを仕掛け続けるコアスタッフの創業者であり代表の戸沢正紀氏に聞いた。
多岐にわたるサービスメニュー
半導体メーカーから製品を仕入れ販売する一般的な半導体商社が手掛ける正規販売代理店業務を行う一方で、部品1つからWeb販売するオンラインサイトを運営する。さらには、EMS(電子機器受託製造サービス)を手掛け、組み込みボードコンピュータを開発、製造、販売する――。
半導体商社業界は、顧客ニーズに対応すべくビジネスの多角化が進んでいる。その中でも、コアスタッフが手掛けるビジネスの数は特に多い。売り上げ規模1000億円を超える大手半導体商社を見渡しても、冒頭に挙げたようなビジネスを全て手掛ける商社は、ほんのわずかだ。
コアスタッフの売り上げ規模は、2015年度実績で約32億円だとする。大手半導体商社に遠く及ばない事業規模にもかかわらず、大手をしのぐ事業の多角化を進めているのだ。
コアスタッフは2000年に、それまで大手半導体商社で勤務していた戸沢正紀氏が創業した。業界では比較的新しい商社だ。
戸沢氏がまず、コアスタッフで手掛けたのが、余剰在庫の委託販売事業だ。セットメーカーなどで余っている在庫を、コアスタッフが預かり、販売するという事業モデルだ。コアスタッフ自社で倉庫兼物流センターを所有し、委託された余剰在庫を保管。同時に、Web通販サイト「ザイコストア」を立ち上げ、預かった余剰在庫を販売するという独自のビジネスモデルを構築。そこから、半導体・電子部品メーカーからの正規仕入れ品を販売する一般的な通販型半導体商社のビジネスモデルが加わり、現在では、ザイコストアで発注できる製品点数は609万点を超える。一方で、EMSビジネスも展開し、2016年6月には、「Armadillo(アルマジロ)」などの産業用ボードコンピュータメーカーであるアットマークテクノを子会社化している。
なぜ、コアスタッフはここまで事業を多角化するのか。その狙いや今後の事業展開について戸沢氏に聞いた。
オンラインとオフラインの融合
EE Times Japan(以下、EETJ) さまざまな事業を展開されていますが、コアスタッフが目指すビジネスモデルとはどのようなものなのですか。
戸沢氏 一言で言うと、オンラインとオフラインを融合させたビジネスモデルを目指している。そして、事業領域は、「部品」「EMS」「IoT」の3つだと考えている。
EETJ まず部品販売事業ですが、オンラインでの余剰在庫販売から始められましたが、取り扱い点数が大きく増えました。
戸沢氏 セットメーカーや商社の余剰在庫だけでなく、商社の在庫情報を預かり販売するケースや、余剰ではない在庫を商社から預かる戦略的在庫委託も増えている。
また、世界的な大手半導体・電子部品の通販型販売代理店であるMouser Electronicsや半導体製造中止品を扱うRochester Electronicsと販売代理店契約を結んだ。そして、直接、販売代理店契約を結ぶ半導体/部品メーカー数も増え、現在は27社になっている。
こうした取り扱い製品数の拡大を受けて、1つから販売するオンライン販売以外にも、オフラインで試作に必要な部品の調達を代行するサービスを強化している。
BOMを100%そろえられる商社へ
EETJ 調達代行サービスを強化する狙いは?
戸沢氏 販売ボリュームを確保し、対サプライヤーへのコアスタッフとしての価値を高めるためという意味合いがある。ただ、それ以上に、試作用部品調達のアウトソースニーズがとても高く需要があるためで、将来的にはオンラインの部品販売を大きく上回り、売り上げの柱になるビジネスだと考えている。
EETJ 調達代行サービスの強化の内容を教えてください。
戸沢氏 調達代行は、BOM(=部品表)を100%そろえなければ意味を成さない。現状、仮に100点のBOMがあった場合、当社の在庫やルートで80点は調達できる。そこで、現在、残りの20点を埋めるための努力をしているところだ。具体的には、残りの20点を埋めるための専門チームを構成し、そのチームでさまざまなルートを駆使し部品を探し出したり、代替品を提案したり、といった対応で、安定的に100%の調達が行えるような体制を構築しつつある。
こうした安定的に全ての部品をそろえられる商社は他にないだろう。実現できれば、コアスタッフとしての大きな強みになる。常に試作段階での調達を任せてもらえる確率は高く、さらには試作の次フェーズである量産段階でのビジネスにつながる可能性があると考えているからだ。
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