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エレクトロニクス企業の活動を助ける海外企業との取引きに失敗する理由(1/2 ページ)

国内のエレクトロニクス企業が海外の企業から部品を調達したり、海外の企業から製造委託を受ける際、「IPC規格」について問われる機会が多い。だが、日本企業の製造品質は高い。なぜIPC規格が必要なのだろうか。IPCのプレジデント兼CEOを努めるJohn Mitchell氏にIPCの意義と活動内容を聞いた。

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なぜIPC規格が必要なのか?

 電子部品の実装関係の標準化などを手掛けるIPC。だが、日本国内ではようやく広がりを見せ始めた段階だ。IPCでプレジデント兼CEOを努めるJohn Mitchell氏に、IPCの意義と活動内容を聞いた。


――IPCはどのような目的をもって規格を策定し、活動しているのでしょうか。


IPCでプレジデント兼CEOを努めるJohn Mitchell氏

John Mitchell氏 よく誤解されるのだが、IPCは特定の内容の規格策定を狙ってはいない。会員企業の議論を促し、投票によって決まった内容をとりまとめている。規格化プロセスのマネージングに専念しているのだ。さらに各規格のチェアマンもほぼ会員企業のボランティアが担っており、IPCが議論の方向付けをしているのではない。

 なぜこのような進め方をするのかというと、標準の価値が高まるからだ。実際にデータを持ち、経験を積んでいるのは各会員企業なのだから。

 IPC規格の特徴は、はんだ付けなど実装結果の良しあしを示したものだ。実装方法については決めておらず、各企業が独自の方式を採用していても構わない。

 IPCの大きな目的はエレクトロニクスメーカーが長期間にわたってより活動しやすくなるよう促すことだ。そのために4つの活動を進めている。標準規格の成立を助け、IPC規格に関する教育を提供し、IPC規格を認証し、政府との関係を円滑にしている。


IPC-A-610は組み立て品の視覚的な品質許容条件を扱っている

 現在、約300の規格があり、中でも「IPC-A-610」が最も重要だろう。教育では、現場の作業者向けと、指導者向けのカリキュラムを提供しており、認定試験を実施している。政府との関係は多少分かりにくいかもしれない。各国政府が規制を策定する段階で、エレクトロニクスメーカーの意見を政府に伝え、科学的な内容になるように支援する活動だ。

――ISOやIECといった規格があるにもかかわらず、IPC規格を作り上げる意味は何でしょうか。

Mitchell氏 IECは国の代表が標準規格を作り上げており、長い時間をかけてさまざまな分野の規格を策定している。IPCはエレクトロニクス関連の製造結果に特化しており、世界全体で統一した規格を作り上げている。

 この分野は利用する技術や材料の変化が激しく、IECなどではカバーできない。実際に主要なIPC規格は3年に1回新しいリビジョンを発行している。

 もう1つ違うのはIPCが完全な民間規格だということだ。IPCはそもそも米軍が調達に利用していたMIL規格に源流がある。ところが、現在では米国政府がMIL規格の更新を停止しており、エレクトロニクス部品の調達や製造委託に利用しやすい規格はIPCしかないと言うことができるだろう。

――欧米諸国や中国、台湾、韓国ではIPC規格がよく使われていると聞きました。日本ではエレクトロニクスメーカーが数十年にわたって製造技術や品質管理技術を改良し続けており、優れた社内規格があります。日本企業がIPC規格を取り入れる意味はあるのでしょうか。

Mitchell氏 IPC規格は他国のメーカーから部品を調達する、またはその逆の場合に、メーカーが一定の水準に達していることを示す役割がある。日本企業の取引が国内で閉じているのなら、あまり必要ではないかもしれない。しかし、欧米やアジアの企業と部品のやりとり、製造委託をするのであれば、IPC規格がパスポートのような役割を果たす。「IPC-A-610」を採用していると言えば、海外企業に対して話が通じる*1)

 日本のエレクトロニクス企業の製造技術や品質管理が優れていることは疑いない。IPCを導入したからといって、従来の社内規格を捨て去る必要はない。社内規格をIPCの目で見直して、IPCよりも優れた部分を訴えることもできる。

*1)ただし、IPC規格にのっとって製造を委託する際には落とし穴がある。IPCでは製造品質を4つのクラス(一般的なエレクトロニクス製品、特定用途製品、高性能製品、航空・宇宙製品)に分けており、どの段階の実装が必要なのかを相手企業に伝える必要がある。この手順を踏まないと、最も低い品質であるクラス1で納品されてしまう。

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