日本企業が世界最高水準、記録的な発電コスト:太陽電池(1/2 ページ)
太陽電池を用いた発電方式が化石燃料に取って替わるかどうか。1枚の太陽電池の発電コストを決めるのは、変換効率と寿命、製造コストだ。だが、太陽電池を大量に利用した大規模な発電所を作り上げる際には、他の要因がより効いてくる。アラブ首長国連邦アブダビに建設を予定する太陽光発電所の事例から、順調に発電コストが下がっていることが分かる。
1kWh当たり2.42セント
太陽光発電にまた1つ記録が生まれた。発電コストに関する記録だ。
丸紅と中国Jinko Solarは共同で、新規に建設する太陽光発電所について、1kWh当たり2.42セント(約2.42円)という応札価格を提示した(図1)。本誌の調査によれば、太陽光発電所の発電コストの中で最も低い。
今回の値は、化石燃料や原子力を利用した発電所と比較しても低くなる計算だ。直接比較はできないものの、日本の家庭用電力料金の約10分の1に相当する。なぜこのようなコストダウンが可能になったのだろうか。
現場は中東のアブダビ
丸紅とJinko Solarの応札は、アラブ首長国連邦に建設する太陽光発電所に対するもの(図2)。
1000万人近い人口を擁するアラブ首長国連邦は、世界の石油埋蔵量の6%を占める石油大国であり、大量の石油を輸出している。輸出シェアは世界第3位だ。連邦はアブダビやドバイなど7つの首長国から構成されており、中でもアブダビに石油資源が集中している。このため、アブダビの発電所のほぼ100%が火力を利用していた。
それにもかかわらず、アブダビ政府は太陽エネルギーを中心に、再生可能エネルギーの比率を拡大する政策を、10年以上進めてきた(図3)。連邦全体では2020年に総発電量に占める再生可能エネルギーの比率を7%にまで高めるという数値目標を打ち出している。
このような政策を進めている理由は幾つかある。再生可能エネルギーには、当初、発電コストが割高だという弱点があった。しかし、エネルギー生産基盤を多様化し、地球温暖化対策を進めるためには、化石燃料に頼り切ることができない。
他の代替エネルギーに先駆けて再生可能エネルギーに注目した理由は、投資対効果が高く、投資対象として優れていたこと、国内に再生可能エネルギー源が存在することだ。
国営企業が計画を主導
このような経緯から、アブダビの国営企業であるAbu Dhabi Water and Electricity Authority(ADWEA)は、2030年までに合計5GWの太陽光発電所の建設を計画している。
2016年4月、ADWEAは首都アブダビ市の東約120kmに位置するSweihan近郊に、出力350MW(35万kW)の太陽光発電所を建設するという条件のもと、IPP(独立発電事業者)の入札を求めた。IPPが発電所を立ち上げ、長期間ADWEAに電力を供給する形になる。
その結果、6つの企業連合が応札した。2016年9月19日、ADWEAは6つの企業連合の代表を集めて開札。丸紅と中国のJinko Solarの連合が最も低い価格を提示したことが分かった(図4)*1)。2位はアブダビに本社を置くMasdarのグループだった。
ADWEAは今後、アドバイザーによるデューデリジェンスの確認のために、2〜3週間をかけて応札情報を精査する予定だ。発電所の運転開始時期は明らかになっていないものの、この規模であれば、建設に2年程度を要するだろう。
*1) 応札結果は同国の通貨単位であるディルハム(フィルス)で表されているものの、ADWEAはドル換算値も明らかにしている。同国通貨で表示すると、2.42セント/kWhは、8.888フィルス/kWhとなる。
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