磁性の80年と未来を見に、秋田県にかほ市に赴く:TDK歴史みらい館(1/2 ページ)
TDKは2016年10月7日、創業の地である秋田県にかほ市に「TDK歴史みらい館」をオープンした。同社の「磁性」を中心とした製品や技術だけでなく、未来への取り組みや、チームラボとのコラボレーション展示が紹介されている。本記事では、展示の様子を写真で紹介する。
秋田県にかほ市にオープン
2016年10月9日、自然があふれる秋田県にかほ市に初めて足を踏み入れた。東京駅から新幹線で秋田駅まで約4時間。秋田駅からは、羽越本線で1時間ほどかかる。
今回にかほ市に訪問したのは、TDKが創業の地にオープンした「TDK歴史みらい館」を訪問するためだ。TDK歴史みらい館は、2005年に創業70周年を記念して開設した「TDK歴史館」を全面リニューアルしたもの。同社の「磁性」を中心とした製品や技術だけでなく、未来に向けた取り組みや、チームラボとのコラボレーション展示が紹介されている。
本記事では、展示とオープンを記念して開催されたイベントの一部を紹介する。
フェライトコアの登場
入館すると、磁性の歴史がフェライトコアの登場から紹介されている。フェライトコアの登場が大きな影響を与えたのは、ラジオとブラウン管テレビだ。1950年ころまでのラジオは雑音や混信が多かったが、フェライトコアの登場でノイズの少ないラジオが楽しめるようになった。また、ブラウン管テレビの偏向ヨークコアとして採用されたという。
1960年代に登場したのは、カセットテープに活用する磁気テープである。カセットをテープレコーダーに入れると、磁気テープはヘッドに接触する。ヘッドのコイルには、マイクが拾った音が、電気信号として送られてくる。ヘッドは、この電気信号を電磁石の原理で、磁気の強弱に変え、録音していた。1970年半ばになると、家庭用VTRが発売されて、カセットテープ技術を応用したビデオテープが量産された。
家電をコンパクト化した積層チップ品
1980年代には、積層チップ品が開発され、家電の小型化が進んだ。肩から下げて持ち歩いていた携帯電話機は、今では片手で持てるスマートフォンに進化している。展示によると、積層チップインダクターは、セラミックスのシートにコイルパターンを印刷したものを何層にも積み上げ、らせん状の内部電極を形成して製造される。1980年にTDKが世界で初めて開発した工法で、線を巻かないため小型化と量産化に適していたという。
最後は、磁気ヘッドの登場だ。1990年代に大容量のハードディスクドライブ(HDD)が開発され、PCに表計算やワープロ、画像処理などのソフトを搭載できるようになった。HDD内部では、磁性体の記録層を持つディスクが高速回転している。磁気ヘッドは、記録層の磁性体を磁化して情報を記録。その磁化を読み取って情報を再生する。
展示では、培った磁性の技術が、現在の産業機器やインフラ機器、ICT機器にどのように応用できるかなども紹介されている。特に、2016年9月に東芝と車載用インバーターの開発に関する合弁会社を設立するなど、車載機器には注力しているようだ。TDKの説明員は、「HDDヘッドのTMR素子を応用した磁気センサーは、電動パワーステアリング装置(EPS)モーターの角度センサーや回転系センサーに用いられている」と語った。
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