2000ノードの組合せ最適化問題、解探索に成功:量子ニューラルネットワーク(1/2 ページ)
NTTの武居弘樹氏らによる研究グループは、従来のコンピュータでは効率よく解けなかった「組み合わせ最適化問題」を、高速に求めることができる「量子ニューラルネットワーク」を開発した。
光を用いて難問を解く、新たな量子計算原理を実現
NTT物性科学基礎研究所量子光制御研究グループで主幹研究員を務める武居弘樹氏らによる研究グループは2016年10月、従来のコンピュータでは効率よく解けなかった「組み合わせ最適化問題」を、高速に求めることができる「量子ニューラルネットワーク」(QNN:Quantum Neural Network)を開発したと発表した。
今回の研究成果は武居氏の他、NTT物性科学基礎研究所量子光制御研究グループの稲垣卓弘研究員、国立情報学研究所(NII)情報学プリンシプル研究系の宇都宮聖子准教授、Peter McMahon研究員らの研究グループによるものである。
組合せ最適化問題とは、さまざまな条件の下で、多数ある選択肢の中から最適なものを選び出す問題。問題サイズが大きくなるとその選択肢は爆発的に増える。このため、従来のコンピュータでは問題を解くのが困難になっているという。高速に問題を解く必要がある用途は、創薬のための化合物探索や無線通信ネットワークにおけるリソース最適化、不完全な観測データから元情報をできるだけ忠実に再現する圧縮センシング、深層学習などがある。
こうした課題を解決するため、計算原理が現行のコンピュータとは全く異なる計算機モデルの研究/開発が進んでいる。例えば、量子コンピュータや量子アニーラ、QNNなどである。
研究グループは、測定フィードバックによる波束の収縮でトリガーされる相転移を動作原理とする、新たな量子計算スキームを提案した。今回開発したQNNシステムでは、長距離光ファイバーで構成した共振器を周回する時分割多重OPO(光パラメトリック発振器)パルス(スピン)群を「ニューロン」と想定した。
また、各OPOパルスの発振位相と振幅を測定し、その情報に基づいてFPGAが各OPOに入力するフィードバック信号を計算。この信号を光パルスに重畳して各OPOパルスに帰還する量子測定フィードバック回路を「シナプス結合」と見立てたシステムを開発した。これにより、任意のOPO間結合が可能となり、従来に比べ極めて複雑な量子発振器ネットワークを実現することができるという。
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