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ルネサスが見据える2020年、車載/汎用事業の行方中期成長戦略を発表(1/3 ページ)

ルネサス エレクトロニクスは2016年11月、2016年12月期第2四半期の業績とともに、2020年ごろに向けた車載事業と産業・ブロードベース事業に関する中期成長戦略を発表した。

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HEV/EVとADASに注力へ


半導体集積回路技術の国際会議「ISCC 2015」でルネサスが発表した28nmプロセス技術を用いて4Mバイトプログラム格納用フラッシュメモリと64Kバイトデータ格納用フラッシュメモリを試作したチップ写真 出典:ルネサス

 ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は2016年11月、2016年12月期第2四半期の業績とともに、2020年ごろに向けた中期成長戦略を発表した。

 ルネサスはこれまで、経営数値目標として「売り上げ総粗利益率45%」「営業利益率15%」を掲げてきた。今回の中期成長戦略での数値目標では、2020年ごろに向けて上方修正し、「売り上げ総粗利益率50%」「営業利益率20%以上」を目指す。ルネサス社長兼CEOの呉文精氏は「事業の効率化やIntersil(インターシル)との統合によるシナジーを広げることで、達成できるだろう」と語る(関連記事:ルネサス、中期経営数値目標を上方修正)。

 注力する車載事業では、「世界ナンバーワンシェア」とする車載マイコン/SoCを基点に、さらなる成長を狙う。2015年度の車載向けマイコン/SoCの出荷数は9億2000万個で、新車1台当たりに11個のルネサス製マイコン/SoCが搭載された計算になるという。執行役員常務兼第一ソリューション事業本部長の大村隆司氏は、「品質不良も0.1ppm以下と、競合他社と比べても品質が高いのも当社の特長である」と語る。

 車載マイコン用プロセス技術においては、「競合他社よりも2年先を進んでいる」(大村氏)とする。2016年9月1日にはTSMCと提携し、28nmプロセスを用いたフラッシュ内蔵マイコンの開発と製造を行うと発表。半導体集積回路技術の国際会議「ISCC 2015」で既に開発発表が行われており、2017年後半のサンプル出荷、2020年の量産する予定だ。これらの強みにより、2020年には車載マイコンで世界シェア6割を目指す。


TSMCと提携して28nmフラッシュマイコンを開発 (クリックで拡大) 出典:ルネサス

 注力領域には、HEV(ハイブリッド自動車)/EV(電気自動車)とADAS(先進運転支援システム)を挙げる。この2つは、車載分野で特に成長が期待される領域であり、2015〜2020年における年平均成長率(CAGR)はHEV/EVが18%、ADASが17%である。

 EV向けには、モーター制御マイコンとプリドライバー、IGBTをキットにして、小型のインバーターを展開していく。特に、中国の電動車両の市場予測は、2016〜2023年にかけて4倍以上になる見込みであり、「インバーターのキットを拡販し、2020年には中国EV市場のモーター制御用半導体でトップシェアを狙いたい」(大村氏)と語る。


中国自動車向けの成長戦略 (クリックで拡大) 出典:ルネサス

 ADAS/自動運転向けには、制御系のマイコン「RH850」ファミリーと、情報処理系のSoC「R-Car」ファミリーを中心に、堅ろう性の高い自動運転のトータルソリューションが提供できるとした。自動運転向け半導体も、2020年のトップシェアを目指す。

過去最高の商談獲得金額を実現


大村隆司氏

 また、2016年10月には「HAD(高度自動運転:Highly Automated Driving)ソリューションキット」を発表。同キットには、ハイエンドのSoC「R-Car H3」を搭載した車載用開発キットが2つと、シャシー制御用ハイエンドマイコン「RH850/P1H-C」を搭載し、自動運転システムの開発環境を提供する。2017年2月に販売開始予定で、価格は未定だ。大村氏は、「自動車業界を超えて、多くのユーザーに活用してもらいたい」と語る。

 「東日本大震災の影響などにより、2013年までの受注は減少傾向にあった。しかし、そこからアプリケーションを軸に体制を切り替えたことで、確実にデザインインを伸ばしてきた。私自身も驚いているが、2015年度は過去最高の商談獲得金額(顧客生涯価値[LTV]ベースで5000億円以上)を達成した。さらに、2016年度も上期終了時点で、2015年度の通期獲得規模に近いデザインインを獲得している。顧客の方々に感謝している」(大村氏)

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