スマホに次ぐ成長分野を、日本モレックスの挑戦:単品からソリューションの提供へ(1/2 ページ)
コネクターやハーネス品などの各種接続システム提供する総合メーカーのMolex(モレックス)。売上高では業界トップクラスを誇るが、スマートフォン市場の成長率鈍化などを背景に、新たな成長のけん引役が求められている。そこで、Molexの日本法人である日本モレックスでマイクロソリューションズ事業統括本部長(MSBU)を務める長田和清氏に、今後の戦略について聞いた。
スマホの影響で2016年は苦しい状況
コネクターやハーネス品などの各種接続システム提供する総合メーカーのMolex(モレックス)。2013年まではNASDAQに上場していたが、Koch Industries傘下入りして以降、プライベートカンパニーとなっている。日本モレックスのWebサイトによると、業界トップクラスの売上高を誇るメーカーの1社だ。
しかし、コネクター需要を引っ張ってきたスマートフォン市場の成長率鈍化が見込まれる昨今、新たな成長のけん引役が求められる。そこで、日本モレックスでマイクロソリューションズ事業統括本部長(MSBU)を務める長田和清氏に、今後の戦略を聞いた。
長田氏によると、2015年までの業績は順調に成長してきたが、2016年は苦しい状況にあるという。スマートフォン市場の成長率が鈍化していること、インダストリアル向けの製品の需要が伸び悩んだことを理由として挙げる。しかし、2016年第3四半期からの業績推移は、「全般的に回復している傾向にある」(長田氏)と語る。
モレックスは2016年11月現在、市場ごとの事業部制をとっている。日本モレックスはコンシューマー向けと汎用製品を扱うCCS(Consumer & Commercial Solutions)の母体となっており、同社社長の梶純一氏がCCS代表を兼務。コンシューマー製品だけでなく、自動車や産業機器、医療機器向けの製品開発も一部国内で行っているとする。
「特徴的なのは、それぞれの事業部は営業組織を持たず、営業/マーケティング機能はグローバル全体の組織(GSM:Global Sales & Marketing)が担っていること。事業部で営業組織を持つと、他の事業部の製品を売らない傾向にあるからだ」(長田氏)
多量少品種から少量多品種へ
長田氏がトップを務めるMSBUは、CCSにおけるビジネスユニットの1つであり、日本モレックスが得意としてきたモバイルコンシューマー向け製品を展開している。
長田氏は、「MSBUは日本の顧客と成長してきたが、国内メーカーは厳しい状況に立たされ、海外展開を積極的に進めている。当社のビジネスも海外の売上比率が高まってきている。しかし、2つの工場も含めて、日本モレックスだけで約1700人の従業員が働いている。つまり、海外顧客だけを相手にしていると、リソースの浪費となってしまう。国内の存在感を高めるためには、他の市場を開拓する必要が出てきた」と語る。
他の市場を開拓する必要性はもう1つあった。「アップダウンの激しいモバイルコンシューマー向けがビジネスの大半を占めると、市場が落ち込むときのインパクトが強い。安定したベースが欲しかった」(長田氏)。そこで、長田氏がMSBUのトップに就任した2014年から、方向転換を進めてきた。
MSBUが新たな市場として活路を求めつつあるのが「カーエレクトロニクス」「メディカル」「ロボティクス」の3つだ。カーエレクトロニクス市場は模索中とするが、「カーナビゲーションシステムが、スマートフォンやタブレット端末に置き換わる中で、小型化や高速伝送技術がアドバンテージになるのではないか」(長田氏)と語る。
メディカルやロボティクスは、後述する「Temp-Flex」「MID」などを用いたソリューションを提案していく方針。つまり、これまでモバイルコンシューマー向けで培ってコア技術を生かせして、成長市場に参入する戦略である。
MSBUのコア技術の1つは、“マイクロソリューション事業統括本部”の名の通り、軽薄短小なコネクターを開発できることにある。もう1つが、厳しい価格競争が存在するモバイルコンシューマー市場で鍛え上げられた“大量の製品を高品質で安定して供給できる生産技術”だとする。
「これまで、価格競争が激しい中で、安定的に大量生産を行えるよう自社で自動化技術を構築してきた。この自動化技術を、少量多品種生産に適用できるよう改良し、カーエレクトロニクスやメディカル向けの高品質な製品の生産に生かしていく」(長田氏)
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