売上高3000億円超の世界へ「野武士を組織化する」:太陽誘電 社長 登坂正一氏インタビュー(4/5 ページ)
太陽誘電は、主力のコンデンサー、インダクター、通信用フィルターを中心にスマートフォン向けが好調で、2016年3月期に過去最高となる売上高2403億円を達成した。今後も中期的には売上高3000億円の大台突破を狙う方針。事業規模拡大に向けた経営戦略を同社社長の登坂正一氏に聞いた。
スマイルカーブの端と端
EETJ 2016年度はじめに公表された経営方針の中で、事業の方向性として、基本ビジネスでスーパーハイエンド、高信頼商品の強化とともに、ソリューションによる新事業の創出を掲げておられます。
登坂氏 愚直に技術を極限まで追求する「基本ビジネス」と、「ソリューション」で、スマイルカーブの端と端をやろうという意図だ。
スマイルカーブの真ん中に相当する実装や組み立てで、付加価値を付けるのは難しい。“モジュール+ソフトウェア”というソリューションもあるが、これも苦しい。アフターサービスまでを提供するようなソリューションを手掛けるのが一番、付加価値を高めやすい。そうしたソリューションの提供を目指したいと考えている。
圧電デバイスに大きな需要見込む
EETJ どういったソリューションの提供に着手しているのでしょうか。
登坂氏 それなりに大きなビジネスとなっているソリューションビジネスの1つに、電動アシスト自転車の回生システムを全部作り上げ提供するビジネスがある。顧客にできるだけ近い位置にいてニーズを把握し、そこから、作るべき商品を何かを考え出して、芽吹いてきたビジネスだ。
他にも、機能性表面処理膜というユニークな製品も、顧客の要望から生まれたソリューションとして提供している。機能性表面処理膜は、さまざまな製造工程の自動化に役立ったり、スクリーン印刷を超ファインピッチにできたり、排水処理にも使えたりと、さまざまな応用用途がある。われわれとしては、これまでほとんど関係がなかったところと結び付きが生まれ、そうしたところからの情報が得られ、多角的なビジネス検討が行えるようになったという効果も生まれている。
さらに、今後、相当に大きな市場が見込まれ、期待を寄せている新規事業に、セラミックによる圧電デバイスがある。太陽誘電はもともと、セラミックの会社であり、フィルターで圧電体を扱ってきた。圧電体セラミックを開発する素地があった。3年ほど前から、ハイレゾイヤフォン、ハイレゾツイーター向けで事業が立ち上がりつつある。
そして、これから需要が見込まれるのがタッチパネルディスプレイなどに触感を生む用途だ。ハプティクス(触覚)技術としては、メカ、モーターとの競合になるが、圧電素子の方が低消費電力で、繊細な制御が行える特長があり、優位性があると考えている。セラミックを扱う各社も圧電デバイスに取り組みつつあり、多くのメーカーがいることで圧電セラミックの勢いは増すだろう。市場が立ち上がれば、コンデンサー、インダクター、フィルターに続く、4つ目のビジネスになる可能性もあると考えている。
圧電技術はセンサーにも応用している。
EETJ 圧電デバイスもソリューションビジネスとして展開されているのですね。
登坂氏 今のところ、ソリューションとして提供している。例えば、センサーもセンサーだけでは、もうからず、センサーで何ができるかというソリューションを提供しなければならない。また、センサー部分は消耗品として、取り換えなどのアフターサービスにつながるビジネスモデルも追求している。
アフターサービスにつながるビジネスとしては、PV(太陽光発電)モニタリングシステムというのも展開している。このシステムは、PVシステムに後付けで取り付けられるもので、発電効率がどれだけ落ちているかなどを計測できるもの。ここに、効率が落ちた際に、どうすれば効率を改善できるかなどのアフターサービス的なソリューションを提供できると考えている。
EETJ 新規事業の中には、コンデンサーなどの基本ビジネス、コア技術と関連性の薄いものもあります。新規事業はどのように選択しているのですか。
登坂氏 社内でいろいろなテーマが出てくる。それを社内のテーマ審議会の中で検討している。テーマの採用基準は、ロードマップがちゃんと書けているかどうかであり、コア技術との関係が弱いものでも採用する。往々にしてうまくいかないことも多いが、そうした失敗も学習であり、新規ビジネスに取り組んでいる。
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