2017年の半導体市場は先行き不透明:米大統領や英のEU離脱などで(1/2 ページ)
2017年の世界半導体市場は、見通しを立てるのが難しくなっている。米国のトランプ大統領やイギリスのEU離脱などが、半導体業界の将来予測にも影響を与えている。
メモリ分野がけん引要素に
2017年の半導体業界は、世界の政治情勢の中の不確定要素が中立的かつ前向きな状態にある限り、好調を維持できるはずだ。DRAMやフラッシュメモリ、32ビットマイコン、アナログや車載用製品などが成長をけん引し、成長率5%で伸びていくとみられる。
米国の市場調査会社であるIC Insightsでプレジデントを務めるBill McClean氏が、米国シリコンバレーで開催された年次イベントにおいて、今後の展望を語った。同氏は、「2017年の半導体業界は、中国が現在構想している壮大な計画や、トランプ政権などによって、それほど大きな影響を受けることはないだろう。しかし、欧州で台頭しているポピュリズムが、成長の妨げとなる可能性はある」とみているようだ。
McClean氏は、「2017年は、重要な節目の年になるだろう。世界半導体売上高は3141億米ドルに達し、初めて3000億米ドルを超え、過去最高を記録する見込みだ。今後長期にわたり、年平均成長率4〜5%で伸びていくとみられることから、2023年には4000億米ドルを超え、次の大きな節目が来るだろう」と述べている。
同氏は、「2017年の半導体業界の成長を大きくけん引するのは、メモリ分野だ。同分野は過去2年間にわたり、足を引っ張る存在だったが、今後は成長率10%で伸び、上昇していく可能性を秘める。中でも、世界半導体市場において売上高が第1位のDRAMと、第3位のフラッシュメモリが、重要な役割を担うとみられる。いずれも価格が上下しやすいため、市場全体の3〜5%を変動させる可能性がある」と述べている。
特定アプリケーション向けの車載用アナログ部品と32ビットマイコンは、それぞれ成長率11%と12%で伸び、メモリを超える勢いをみせるだろう。さらに、オプトエレクトロニクスやセンサー、ディスクリートなどのさまざまな分野も、半導体市場全体を大きくけん引していくとみられる。
半導体市場では、過去2年間で実施された合併買収の合計金額が、2018億米ドルに達した。McClean氏は、「今後も数年間は、上位10社から25社の時価総額がますます増大する傾向が続くだろう」と指摘する。
NVIDIAは2016年に、35%という最も高い成長率で伸び、ファウンドリーを除く世界半導体メーカーランキングにおいて、2015年から順位を2つ上げ、第15位を獲得した。その後に、中国のSMICが成長率31%、イスラエルのTowerJazzが同30%で続く。
業績が好調だった大手メーカーとしては、成長率20%のMediaTekと、同14%の東芝(一部の事業部門を売却予定)、同11%のTSMCが挙げられる。一方、SK HynixとMarvell Technologyは、いずれも成長率を14%下げていて、三菱電機は17%減と最も減少幅が大きかった。
QualcommとNXP Semiconductorsは、それぞれ成長率が7%減と10%減で、不調に終わっている。しかし、両社が予定している合併買収が完了すれば、IntelとSamsung Electronicsに次ぐ第3位の半導体メーカーの座を獲得することになる。トップ10社の中では、唯一の大きな変化となるだろう。また、Huawei傘下の半導体設計開発メーカーHiSilicon Technologyは、15%の成長率で伸び、2016年のトップ20入りを果たした。
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