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1/100秒単位でシミュレーションした「飛び込み」は、想像を絶する苦痛と絶望に満ちていた世界を「数字」で回してみよう(39) 人身事故(11)(3/7 ページ)

今回は「飛び込みを1/100秒単位でシミュレーションすること」に挑みます。私が目指すところはただ1つ。このシミュレーションによって「飛び込みによる、想像を絶する苦痛」を浮き彫りにすることで、たった1人だけでも、飛び込みを思いとどまってほしい――。本当にこれだけなのです。

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「轢断」と「切断」

 次の疑問は、そもそも、「飛び込み自殺」は、大量出血を目的とする自殺として、効率的なものなのか、というものです。私がこだわっていた点は「轢断」です。これは、シバタレポートでも何度も繰り返されていることから、シバタさんも同じ点にこだわっていたように思われます。

 つまり、「切断」と「轢断」は本質的に違う ―― 「切る」と「ぶった切る」くらいに違うということです。

 今回、この「切断」と「轢断」の違いを図で理解していただくために、今回は電気のコードを使いました*)。切断は、専用器具(ニッパーなど)で、「スパッ!」と「切り落とす」というイメージに対して、轢断は、ドライバーと金槌(かなづち)を使って「ガンガン!」と「ぶった切る」になります。

*)実は、私は、それぞれの事象を具体的に説明できる事故現場の写真を入手しているのですが、『間違いなく、EE Times Japan編集部で削除される』という確信があったので、この掲載を断念しました。(お気遣い感謝します。編集部

 このように「轢断」では、切断面の開口部が閉塞状態(グシャっと潰れた状態)になりますので、出血しにくくなります。また、「轢断」では、筋肉の収縮が発生するのに加えて、血管内部もボロボロに損傷しますので、血管内に血の塊が発生して、出血を妨げることになります。

 これは、人間の「生存」へのメカニズムとしては、最高のものではありますが、「自殺」という目的においては、最低にして最悪の機能です。

 「飛び込み自殺」が、「無痛の即死」を目指しているのであれば、この「出血を妨害するメカニズム」は、いたずらに、苦痛の時間を延長する効果しかないからです。

 では、次に「飛び込み自殺」における、轢断による、(1)苦痛とその継続時間、(2)出血死に至る時間および(3)自殺に失敗する(救助される)可能性について、以下の図と表を使って、その概要を説明します。

 シバタレポートでは、轢断される4つの箇所について、詳細に検討されています(一部、江端による解釈あり)。

 ざっくりと説明しますと、(A)足首轢断→ほぼ助かる、(B)脛(スネ)轢断→適切な救助活動で助かる、(C)両腿(モモ)轢断→助かる可能性は小さい、(D)胴体轢断→ほぼ即死、という感じになります。

 ただ、苦痛に関していえば、どれもこれも絶望的に「痛い」です。あるべきはずの肉体の部位が、強制的に引きちぎられるのですから、痛くないわけがありません。

 ここにも「切断」と「轢断」の違いがあります。事故直後のショック状態で、痛みの神経が麻痺(まひ)する可能性はありますが、人体は「轢断」に対して止血を試みようと機能します。

 それならば、当然、人体は痛覚機能を最大出力で発動させるはずです。

 自然治癒では間に合わないような出血に対して、人体は、人間に協力(治療)を求めるべく、最大級の激痛という「信号」で、人間に通知するはずだからです。

 何しろ、(D)の胴体轢断の時でさえ、即死できるとは限らないのです。

 泥酔してホームから転落し、電車の車輪で下半身をバッサリと轢断された男性が、駅に響くような声で絶叫していた(『何で〜〜!? どうして〜〜!!』という“ちゃんと意味が分かる言語”を発していた)という話を入手しております(もちろん、周りの人間に見られながら、大量出血で1〜2分後に絶命したそうですが)*)

*)掲示板の内容のもので、裏は取れていません。

 このシバタレポートから、「飛び込み自殺」は、その轢断箇所によって、死に至れる確率が、かなりはっきりすることが分かります。

 その一方で、「飛び込み自殺」が、もう手の施しようがない状態の場合、その確定した死に至るまでの時間が驚くほど長く*)、その間の苦痛と絶望は、想像を絶するほど残酷な(そして、人道的には絶対許されないほど残虐な)ものになるという事実も、また明らかになったのです。

*)例えば、絞首刑の苦痛時間は「5秒」という司法見解があります(「「人身事故での遅延」が裁判沙汰にならない理由から見えた、鉄道会社の律義さ」)。

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