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へつらう人工知能 〜巧みな質問を繰り返して心の中をのぞき見るOver the AI ―― AIの向こう側に(9)(5/10 ページ)

今回は、機械学習の中から、帰納学習を行うAI技術である「バージョン空間法」をご紹介しましょう。実は、このAI技術を説明するのにぴったりな事例があります。それが占いです。「江端が占い師に進路を相談する」――。こんなシチュエーションで、バージョン空間法を説明してみたいと思います。

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コンピュータによる人類滅亡の危機は、確かにあった

 このように、AIによる人類滅亡論を否定した私ではありますが、コンピュータシステムによる人類滅亡のシナリオ自体を否定している訳ではありません ―― というか、分かっているだけで、人類は10回以上も、このような危機に遭遇しているのです。

 ただ、それでも、人類滅亡の危機を発生させたのも、そして回避させたのも、結局のところ、コンピュータではなく人間自身だった、という結論に落ち着きます。

 しかし、私は、『あなたが私(江端)の言っていることを、うのみにしてよい』とも思ってはいません。

 私は、「AIによる人類滅亡の危機」というものが ―― その内容がどれほど荒唐無稽なものであれ ―― それを叫び続けることには価値があると思っています。

 「あなたが感情的に叫び続けることで、私(エンジニアたち)には、それに理性的に説明する機会が生じる」 ―― これは、意外に重要なことだと思っています。

 なぜなら、科学者や研究者やエンジニアは、自分の技術に自信があって、そして、タチの悪いことに、それを心から信じているのです。

 だから、自信タップリに、「確率論を基礎にした原子力発電の大規模事故の確率は、原子炉1基当たり『10億年に1回』→だから原子力発電所の事故への心配は全て杞憂」などということを、信念を持って主張してきた訳です(参考記事)。

 以下は、6年前に、私が作成した実際の原子力発電の大規模事故の年表です。

 私たちエンジニアは、自戒を込めて、この事実を思い出さないといけないと思うのです。

 近い未来、私が「AI技術が起こした大規模事故年表」なんてものを作っている可能性だってあるのですから。

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