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へつらう人工知能 〜巧みな質問を繰り返して心の中をのぞき見るOver the AI ―― AIの向こう側に(9)(8/10 ページ)

今回は、機械学習の中から、帰納学習を行うAI技術である「バージョン空間法」をご紹介しましょう。実は、このAI技術を説明するのにぴったりな事例があります。それが占いです。「江端が占い師に進路を相談する」――。こんなシチュエーションで、バージョン空間法を説明してみたいと思います。

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占いの、もう1つの意義とは

 さて、ここで「占い」の話に戻ります。

 私は、冒頭で、『占いの目的が「正確な未来予測」や、「その予測に基づく適切なアドバイス」ではなく、それらとは全く異なる意義がある』と申し上げました。

 それは、「客に『へつらう』」という意義です。

 なぜ、私が、あれほどまでに「占い師」に対して激怒したかというと、その占い師が、自分の技能や技術に基づいて、未来予測をするわけでもなく、適切なアドバイスをするわけでもなく、「私の気持ちに『へつらう』」ということだけに、30分という時間と3000円という金を、私から奪取したからです。そして、その程度のことで成り立つビジネスに、燃えるような義憤を覚えずにはいられなかったからです。

 私は、その占い師の(持っているのであろう)特殊な技能と技術によって、私の考えに対する否定、修正、あるいは逆提案を期待していたのです。「情報量ゼロ」に対して3000円もの大金を払わされたことが、悔しくて仕方がなかったのです。

 嫁さんにこの話をしたら、もっとすごい話が返ってきました。

 私の嫁さんは、独身のころ、結婚したいと思っている相手(私ではない)がいました。しかし、お義母さんの方は、その人と自分の娘を結婚させたくなかったのです。

 そこで、この2人は、それぞれ別の日に、同じ占い師のところに出向いて、相談をしてきました(もし意図してやったとしたらすごい母娘だと思いますが、本当に、偶然だったようです)。

 そして、その占い師の回答は、以下の通りだったそうです。

 嫁さんへの回答→「その人とは、絶対に添い遂げるべきです。大切なのは相手に対する愛情です。愛があれば、それ意外のことは、後から付いてくるものです」

 お義母さんへの回答→「その人との結婚は、絶対に諦めさせるべきです。結婚というのは、愛だけでは成り立たないものです。若い娘さんには、それが見えていないのです」

 占い師というのは、私たち一般人にはない、特殊な能力や機器(霊視・霊感という第六感、タロットカード、易という特殊な道具)を用いて、絶対唯一の未来を予見し、そこから、依頼者に対する最善の選択肢を提示するのが仕事ですよね。なのに、

なんで、完全同一の唯一対象に対して、2つの真逆の未来と、2つの真逆の選択を提示できるんだ?

 もうご理解いただけたと思いますが、占い師というのは、良く言えば「背中を押してくれる」存在であり、普通に言えば「普通に何もせず」「いてもいなくても、どーでもよく」「客に『へつらう』」存在であるということです。

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