おうちにやってくる人工知能 〜 国家や大企業によるAI技術独占時代の終焉:Over the AI ―― AIの向こう側に(11)(2/9 ページ)
今回のテーマは「おうちでAI」です。といっても、これは「AIを自宅に実装すること」ではなく、「週末自宅データ分析およびシミュレーション」に特化したお話になります。さらに、そうなると避けては通れない「ビッグデータ」についても考えてみたいと思います。そして、本文をお読みいただく前に皆さんにも少し考えていただきたいのです。「ビッグデータって、いったいどこにあるのだと思いますか?」
おうちでAI――DIY AI
こんにちは、江端智一です。
今回は、ちょっと趣向を変えまして、「おうちでAI ―― Do It Youself AI (DIY-AI) 」という観点からお話したいと思います。
今や、パソコンの計算リソースは、20世紀最後のスーパーコンピュータ(スパコン)の性能を上回っており、少なくとも第2次AIブームのAI技術であれば、軽々と自宅のパソコンで実現できるレベルになっています。
今回は、冒頭のような、ざっくりした比較ではなく、過去のデータや法則に基づき、できるかぎり正確に計算してみました。
計算に際しては、第1次AIブームが終わりを迎えた時であって、パソコン用のCPUとしてインテル(Intel)が開発したワンチップのマイクロプロセッサ「4004」が登場した時期でもある“1970年”を基準に計算リソースの比較を試みました。
まず、パソコンが搭載するメモリの容量を調べてみました。
単純にムーアの法則にのっとると、メインメモリはざっくり27億倍程度になっていることが分かります。
さらに、パソコンの頭脳であるCPU(中央処理装置)性能の推移も調べてみました。
こちらも、100万倍を軽く上回る、すごい高速化が図られています。メモリやCPUには「冬の時代」はないのかと、正直ねたましい気持ちになります。
4700兆倍、賢くなっても、「ナンシー」が現れる兆候すらない
さて、上記の2つのデータを用いて、以下のような計算をしてみました。
第1次AIブームの時から、パソコンは頭が4700兆倍も良くなっていて、ほんの7年前からですら、100倍以上も賢くなっています。それなのに、AIの世界においては、ナンシー*4)が出現する兆候すらありません。
*4)参考記事:我々が求めるAIとは、碁を打ち、猫の写真を探すものではない
そんなわけで、最近の私は、現在のコンピュータアーキテクチャを踏襲したままで、「人間の代わりとなる人工知能」を作るのは、もうダメなんじゃないかな、と思っているわけです。
もっとも、「人間の代わりになる」というぜいたくを言わないのであれば、日進月歩で増え続けるコンピュータの計算リソースに対応しながら、AI技術も発展を続けてきたと思います。
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