光コムを活用、高精度に広範囲の立体計測を実現:新たな高速イメージング法を開発
電気通信大学の研究グループは、光周波数コムを用いた新しい高速3次元イメージング法の実証に成功した。高精度で広範囲な瞬時多点距離計測が可能となる。
大きな物体も高精度で瞬時に形状を測定できる
電気通信大学の加藤峰士特任助教と美濃島薫教授らの研究グループは2017年6月、光周波数コム(以下、光コム)を用いた新しい高速3次元イメージング法の実証に成功したと発表した。
3次元形状の計測において、その精度とダイナミックレンジは飛躍的に向上している。光コムと呼ばれる、高い制御性とコヒーレンスを持った超短パルス列を発生する光源を用いた距離計測技術がそれを可能としているという。しかし、被測定物全体の形状を測定するには、光を照射する位置を変えたり、フェムト秒レベルの極めて速い時間で計測したりする必要があるなど、課題もあった。
研究グループは今回、計測対象までの距離情報を、色(周波数)情報に変換して取得する「瞬時イメージング方法」を開発した。この方法を用いて、既知の段差を持つ被測定物(ブロックゲージ)の段差プロファイル形状計測を行い、瞬時に3次元形状を取得できることを原理的に検証した。
具体的には、ファイバレーザーで発生させた光コムから繰り返し出射される超短パルス列を、ビームスプリッターで2つに分ける。色(周波数)が変化しないチャープフリーの光パルスを基準光(リファレンス光)とし、色(周波数)が時間とともに規則的に変化するチャープ光パルスを形状測定用の光(プローブ光)として用いた。
チャープ光パルスを被測定物に照射すると、その反射光は被測定物の段差に応じて遅延時間が発生する。反射光はビームスプリッターを用いて、チャープフリーの光パルスと干渉させる。これによって生じた干渉じまパターンをカメラで撮影し解析を行う。観測された干渉じまパターンの最低干渉じま周波数波長を求めれば、その遅延時間から被測定物との距離を測定することができるという。
段差計測の原理検証では、プローブ光に3.8mのシングルモードファイバーでチャープを与え、パルス幅5.7ピコ秒のチャープパルス光とした。その後、プローブ光を被測定物に照射した。反射したプローブ光と、遅延時間が発生したリファレンス光を干渉させ、回折格子で波長分解したのちに、1次回析光を赤外線カメラで撮影した。
検証実験では、ディレイステージでリファレンス光の遅延時間を調整しながら、赤外線カメラでスペクトル干渉画像を撮影した。干渉画像から各点の位置を求めたところ、段差形状の分布を含めた計測結果は477±12μmとなり、標準偏差の範囲内で設計値480μmと一致することが分かった。
研究グループは、遅延時間を固定して撮影した1枚の画像から、ブロックゲージの立体プロファイル形状を測定した。これによると、測定結果は479.1±1.3μmとなり、精度の高い段差測定が可能であることも分かった。さらに、光コムの高精度なパルス列間隔を用いて、異なるパルス同士の干渉じまを取得し、3m離れて配置された2つのミラーの形状と間隔を瞬時に測定した。これにより、大きな物体でも高い精度で瞬時に形状計測ができることが明らかとなった。
研究グループは、開発した高速3次元イメージング法の用途として、極めて小さい物体から大きい物体まで、高速で精密な形状計測を必要とする分野で期待できるという。また今後は、奥行き測定範囲のさらなる拡大や、光学系の改良によるイメージ分解能の向上などを目指していく考えである。
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