日本の半導体後工程受託企業として見据える未来:ジェイデバイス 社長 仲谷善文氏(1/2 ページ)
国内最大規模を誇る半導体後工程受託製造企業であるジェイデバイスの社長である仲谷善文氏にインタビューした。M&Aを繰り返し、事業規模を拡大しながら、世界2位の半導体後工程受託製造企業であるAmkor Technologyの完全子会社となった同社の事業戦略などについて聞いた。
M&Aを繰り返し事業規模を急拡大
売上高約1000億円。半導体後工程受託製造(Out Source Assembly and Test/以下、OSAT)企業として国内最大規模を誇るジェイデバイス。1970年に仲谷電子製作所として設立し、長く東芝の協力工場として歩んできた同社だが、2002年の竹田東芝エレクトロニクスとの合併、2009年の東芝後工程工場の譲受など数々のM&Aを繰り返し、事業規模を拡大。2012年には富士通セミコンダクター、2013年にルネサス エレクトロニクスの後工程拠点を譲受し、現在、日本国内に11工場を構える。
一方で2015年末、2009年から資本提携を結んできたAmkor Technologyの完全子会社となり、OSAT企業として世界第2位となるAmkorグループの一角を形成する。
ジェイデバイスはなぜ、M&Aを繰り返し、Amkor傘下に入ったのか。そして、これからジェイデバイスはどこへ向かうのか。ジェイデバイス社長と務める仲谷善文氏にインタビューした。
IDMからOSATに転換
EE Times Japan(以下、EETJ) まず、直近の業績を教えてください。
仲谷善文氏 2016年12月期の売上高は990億円だった。今期、2017年12月期は、Amkorの日本地区営業を担当したアムコー・テクノロジー・ジャパンを吸収合併したこともあり、売上高1300億円程度を見込んでいる。吸収合併分を除けば、今期は2〜3%程度の増収を見込んでいる。
EETJ 2015年末にAmkorの100%子会社に移行されました。なぜ、Amkorとの資本提携、傘下入りを選択されたのでしょうか。
仲谷氏 ジェイデバイスは、東芝の協力会社として創業し、その後、東芝、富士通セミコンダクター、ルネサス エレクトロニクスというIDM(垂直統合型半導体メーカー)から工場を買収してきた経緯を持つ。いわばIDMからカーブアウト(事業分離)した企業といえる。言い換えれば、OSATとしてのノウハウ、文化、マインドがなかった。2009年から、OSAT企業となるためにAmkorと提携し、連携を強化してきた。
EETJ 完全子会社化により変わったことは、ありますか。
仲谷氏 経営面については、3人の非常勤取締役をAmkorから受け入れ、重要な経営事項についてはともに判断を下しているが、日常の経営は従来と何ら変わりがない。
ビジネス面での連携はより深まり、今後も連携を強化していく。
EETJ OSATとしてノウハウ、文化、マインドとはどのようなものでしょうか。そして、Amkorとの連携で、そうしたOSATのノウハウ、文化、マインドはジェイデバイスに定着したのでしょうか。
仲谷氏 IDMにとっての後工程工場は、いわばコストセンターに過ぎず、受けた仕事を滞りなくこなすことが優先された。しかし、OSATは、プロフィットセンターとして利益を生み出していかなければ、企業として存続しない。分かりやすく言えば、IDMの後工程工場には、営業が存在せず、仕事を取りにいくというマインドセットがないということ。
2009年のAmkorとの提携以来、そうしたIDMの考え方からOSAT企業らしい考え方、文化に変わりOSAT企業らしくなったと思う。といいつつ、顧客から受注を取る際に、生産能力を保守的に見積もる傾向が強いなど、受注に対し慎重になりすぎるマインドが残っている。このことは良い面もあるのだが、競合のOSATは、結構な無理をしてでも受注量を稼ぎにいくと聞く中で、少し保守的すぎると思う部分もあり、もう少しマインドをニュートラルにする余地も残っている。
ハード面、工場についても、譲受した半導体メーカー以外の製品を製造できる体制への変更を終えている。
EETJ 現状の受注は、工場を譲受した国内半導体メーカーからの委託が中心ですか?
仲谷氏 国内半導体メーカーからの受注が売上高の90%ほどを占める。ただ、譲受から随分と月日が経過し、新規製品が多くなっている。新規製品については、もちろん競合とのコンペになるわけで、ビジネス環境は完全にOSATの環境になっている。
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