5G、IoTで変わる半導体・デバイス:IHSアナリスト「未来展望」(4)(1/2 ページ)
IoT(モノのインターネット)社会の本格拡大に不可欠な第5世代移動通信(5G)技術。現在、規格策定が進められている状況だが、5Gとは一体どのようなものなのか、そして5Gの登場は半導体やデバイスにどういった影響を与えるのだろうか。
5GはIoT社会の本格立ち上げに不可欠なドライバー
5G(第5世代移動通信)によって情報通信技術が変わる、と最近よく言われている。これに関してIHS Markit Technology では、5G技術がIoT(モノのインターネット)社会の本格拡大に不可欠と考えている。IoT市場の拡大が期待されるようになってすでに数年がたっているが、IHS Markit TechnologyでIoTデバイスとして集計している機器の現在の市場規模は、集計当初に比べるとやや下回っている。“スマートxx”といったアプリケーションにおいても、普及が進んでいる分野が多い一方で、足踏みをしている分野も一部でみられている。
日本ではLTE-Advanceといった4Gにおける新技術が導入されており、モバイル技術は日々進歩が続いている。その一方で、従来型のIoTデバイスであるPCやスマートフォン以外の「その他のあらゆるモノ」のインターネット接続と、そこから取得されるデータの利活用については爆発的というよりは、むしろ徐々に進んでいるといった状況である。ITU(国際電気通信連合)などのワーキンググループでは、5G関連の仕様が固まりつつある状況で、今後実現されると考えられている要求スペックが、機器や端末にどのような変化をもたらすかを検証した。
5G技術:初期段階は4Gのエンハンスメントに近い
5Gと一言で言われているものの、新技術は段階的に導入することが予想される。例えば、3GPPでの5G Phase 1は2018年終盤までの仕様決定を目指して進められており、現在そこでは6GHz以下の周波数帯の採用が検討されているため、既存のLTEのエンハンスメント(=強化、拡張)に近い仕様になるといえる。
ついで、3GPPでは5G Phase 2 を2019年末までに仕様決定を進める計画となっているが、そこでは28GHz以上といったミリ波の導入が見込まれるため、新技術の導入に加えて既存インフラと併存するための新たな課題も想定される。
これらの規格化が順調に進むという前提で、IHS Markit Technologyでは5Gのインフラ機器については2018年末ごろから2019年にかけて、初期段階的なものから市場が立ち上がるという見解を現時点で持っている(図1)。
無線とアプリケーションの広がり
技術的な工程表という点では前段の通り進むことが見込まれるが、そもそも5Gを実現する目的としては、やはりIoT社会の本格拡大の意味合いが強い。図2では5Gのユースケースを主に3つのカテゴリーに分け、ITUなどで進められている5Gの要求仕様の各項目へのニーズの強さを示している。E-MBB(モバイルブロードバンドの拡充)、M-MTC(大量の機器間通信)、UR-LLC(高信頼性、低遅延)を活用した3グループのユースケースが想定されている。
5Gについての将来スペックについては、高速化、大容量化、低遅延などがしばしば取り上げられるが、5Gの要求仕様に対するニーズの強さはグループごとで異なる。
例えば、UHD画像やVRを活用した動画の伝送には高速、大容量が求められる一方、センサネットワークによるインフラや機械のモニタリングでは高速、大容量伝送は必要とされず、数年から10年近い電池寿命を維持できるレベルの低消費電力や、メッシュネットワークなどを構築できるだけのネットワーク密度が求められる。
IoTのあらゆる「モノ」=Thingsに通信機能を持たせる数量的なポテンシャルが大きいM-MTCでは、アプリケーションは無限といっていいほど多様である。現在、Wifiやセルラー網を活用したスマートメーターやスマート農業、工場などでのIoT化は進められている。最近では小売や流通業などでのRFIDなどによる自動化、RoLa WANを活用したさまざまな産業へのアプローチなど、すでにアプリケーション、テクノロジーのいずれの軸においても拡大しつつある。接続可能な端末数が増加し、ネットワークの密度が上がる5Gインフラの実現によって、これらがさらに後押しされることが期待される。
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