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誰でも起業を、“フランスのジョブズ”の哲学インキュベーション施設探訪(2)(1/3 ページ)

パリに設立された巨大なインキュベーション施設「Station F」。ここには、“フランスのスティーブ・ジョブズ”と呼ばれる億万長者Xavier Niel氏の「誰でも優れた起業家になり得る」という考えが反映されている。

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“フランスのスティーブ・ジョブズ”の哲学を反映

 フランス・パリに設立された世界最大級のインキュベーション施設「Station F」は、まだ成長途上の発明家たちに向けて、高級感あふれる外観の施設を提供している。しかし、それに惑わされてはならない。Station Fは、いわゆる「コーチング」や「メンタリング」「サポート」などを提供するために設立されたのではない。「しっかり仕事ができないなら辞めてもらう」という、実にシンプルな哲学を掲げているのだ。新興企業は、自らの力で物事を解決することが求められている。


廃駅を改築して建てられた「Station F」

 これは、Station Fの創設者で、フランスの億万長者であるXavier Niel氏自身の哲学を反映している。

 同氏はしばしば、「フランスのスティーブ・ジョブズ」と呼ばれ、インターネット分野における重要人物として知られている。同氏は、フランスで初めて独創的なインターネットの先駆けとなる「Minitel」を開発し、チャットサービス「Minitel Rose」を提供した。

 その後Niel氏は、フランスのインターネットサービスプロバイダーであるFreeを設立し、フランス国内でブロードバンドをベースとしたサービス「Freebox」を開発した。さらに、音声電話やテキスト、データなどを制限なしに無料で使用できる、低価格帯のモバイルプラン「Free Mobile」を提供し、競合企業を駆逐してきた。

 要するにこのフランスの億万長者は、主に厳格なフランス社会のルールを破ったり、秩序に抵抗したりすることで、そのキャリアと富とを築いてきたのだ。

 Niel氏は、Station Fの起業家たちが期待通りの成果を上げていることを称賛している。

 同氏は、2013年に自ら設立したコーディングスクール「42」の生徒を選定するにあたり、表面的な問題に進んで対応することによって、実世界の重大な問題を解決したり、自主的に協業相手となるパートナーを探したりできるような、世慣れた人物を好んだという。

 Station Fの起業家たちも同様に、自発的な協業関係を構築していくことが求められている。

基本的なサービスも安く提供

 Station Fは、各地に存在するアクセラレーターたちと同じように、新興企業の要望に応じて、HR(ヒューマンリソース)や法務、会計、設計、マーケティング、営業などの基本的なサービスを割引料金で提供するという。

 Station Fの新興企業は、Zendeskなどのビジネスツールや、「Amazon Web Services(AWS)」などのサービスも、同じく割引料金で使用することが可能だ。

 さらにStation Fは、現在のところまだ設置には至っていないものの、メーカーズ用のスペースも用意する予定だという。フランスのホームセンターLeroy Merlinからの出資を受けるため、Station Fのメンバーたちは、3Dプリンタやレーザーカッターなどの他、さまざまなワークショップを利用することができ、試作製品を簡単に作れるようになるという。

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