日本は「移動するIoT」をどう考えるべきか? 〜 産業用ドローンへの取り組み:JASA発IoT通信(3)(3/4 ページ)
ドローンは、移動しながらインターネットにつながるロボットであり、「移動するIoT」と呼べる。今回は、ドローンを「移動するIoT」と捉えつつ、さまざまな角度から考察していく。
産業用ドローンのあるべき姿
ドローンを活用した事業者が増える中、産業として活用するドローンはホビー用ではなく、カスタマイズ可能で墜落しにくい安心、安全設計が成された産業用を使うべきである。
では、産業用ドローンとはどうあるべきか? JASAとして「ドローンのあるべき姿」を以下のように定義した。
- 周辺機器情報のフィードバック制御による安心、安全な自律飛行が可能で運航管理ができている
- 産業用途にカスタマイズした機器を監査可能なオープン仕様でメーカーが動作保証している
- 異常事態に対応し、セキュリティが強固である
「1.」は第一に人や物に危害を与えないもので墜落しない仕組みと考える。安心、安全を語る上で組込みソフトウェアの観点から考えるべきは、システムの冗長化である。今や、自動車や産業機器では当たり前になっている。特に飛行に必要な重要部品であるモーターやセンサーなどの冗長化が重要となる。冗長化することでセンサーやモーターが故障した場合でもバックアップが可能となり、より墜落しにくいシステムの構築ができる。ヘキサコプターではモーターが2個停止しても問題ないとされているが、モーター1個が故障すれば他のモーターの負荷が増え、墜落のリスクは高まる。モーター自体も飛行時にフルパワーを使うのではなく負荷を掛けない飛行や、モーターそのものの冗長化が不可欠だ。その状態を管理するのがセンサーであり、センサーも冗長化することでより安心、安全なドローンを作ることができる。
モーター、センサーなどを制御するには組込みソフトウェアのノウハウが不可欠である。墜落しないドローンを作った上で運航管理機能が成り立つ。機体そのものが安心、安全に自律飛行できるクオリティーになった上で、運航管理機能が生きるのではないだろうか。
「2.」はそれぞれの産業用途に合わせカスタマイズした機体をメーカーが動作保証していること。メーカーが自ら作り、中身を全て理解していることが理想であるが、素早く産業用ドローンを立ち上げるためには、オープンソース化し開発を加速させる必要がある。メーカーによってはオープンソースを嫌うところもあるが、オープンソースの場合はブラックボックスと違ってメーカーとして監査可能である。
例えばFC(Flight Controller)や使用している部品にブラックボックスがあると、安全性を担保できないので保証できない。保証できないものは販売できないので、事業者が実現したいサービスにこの機体を使えないことになる。これはドローン産業が成り立たないことを意味する。そのため、メーカーが監査可能なオープン仕様の下、安全基準に基づいて動作保証することが理想である。
「3.」は異常事態発生時のセキュリティ担保だ。異常事態とは、機体が攻撃を受けた場合や衝突、墜落、ハッキングなどを想定する。
例えば、ドローンで撮影した情報が国家の重要施設の機密情報だったとしよう。もし仮に撃ち落され機体を盗難されると、機密情報は盗まれてしまう。墜落やハッキングされた場合も同様で、それらの脅威から機密情報を守る必要がある。ネットワーク上に情報があるならブロックや消去などの対策が可能であるが、ネットワークにつながらないケースの場合、機体自ら判断し情報漏えいを防ぐ必要がある。JASAはセキュリティの強化などを目指し活動している独立行政法人「情報処理推進機構(IPA)」と連携しセキュリティについて議論を重ねている。
日本はドローンの開発で遅れていると考える方も多いが、産業用ドローンは世界でもまだ立ち上がっていない。JASAはOpenELというオープンソースソフトウェア(OSS)の国際標準化を行ってきた。JASAでは基本的な基盤ソフトウェアをオープンソースで公開し、非競争領域として産業界全体で開発することを提案している。非競争領域において日本の産業としての基盤を作り、サービスで利益を出す産業構造が必要である。
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