“ノイズ設計フリー”の車載用オペアンプ ローム:LCフィルター設計不要
ロームは2017年9月12日、ノイズ対策部品を外付けする必要がないノイズ耐性が優れた車載用オペアンプを開発し、サンプル出荷を開始した。
「世界初のノイズ設計フリーの車載用オペアンプ」(ローム)
ロームは2017年9月12日、車載用オペアンプとしてノイズ耐性(EMI[電磁妨害]耐量)を高めた新製品「BA8290xYxx-Cシリーズ」を開発し、サンプル出荷を開始したと発表した。あらゆる周波数帯域のノイズに対し優れた耐性を持ち、従来、オペアンプ周辺に必要だったノイズ対策フィルターが不要で、ロームは「世界初のノイズ設計フリーの車載用オペアンプ」だとする。量産品の出荷開始は2018年6月を予定している。
車載用オペアンプは、主に微弱なセンサー信号を増幅し、マイコン(ないしA-Dコンバーター)に対し出力する用途で使用される。一般に、自動車は電子化されオペアンプ周辺回路も高密度化が進展し、それに伴い、ノイズ対策が必須となっている。従来のオペアンプでは、ノイズを取り除くためのLCフィルターをオペアンプの前後段に取り付けるなどのノイズ設計を施す必要があった。
出力電圧変動を±1.0%以下に
ロームが9月12日に発表した新製品は、ノイズ対策設計を不要にするコンセプトで開発したオペアンプで、最大の特長はあらゆる周波数帯域のノイズに対して外付けフィルターなしで使用できるレベルのノイズ耐性を備えた点にある。車載領域のノイズ評価試験として用いられる「ISO11452-2」準拠の評価試験(200MHz〜1GHz範囲での評価)において、全周波数範囲で出力電圧変動を±1.0%以下に抑制した。
ロームによると、同評価条件での従来品や競合品の出力電圧変動は±3.5〜±10%以上で、影響を受けやすい特定周波数帯のノイズがあり対策が不可欠だったとする。新製品は、トランジスタ素子レベルでのノイズ特性を改善させた独自のバイポーラプロセスに、新規開発の全周波数帯に有効なEMIフィルター回路、さらに長年培ったアナログレイアウトノウハウを組み合わせて「ノイズ設計フリー」を実現したという。
ノイズ設計フリー化により、外付けのノイズ対策部品を削減できる他、「シミュレーションが行えず実測に頼り、手戻りが多く時間、コストのかかる設計から評価までの一連のノイズ設計時間を大幅に短縮できるメリットがある」とする。
産業機器向けなどでも製品展開へ
BA8290xYxx-Cシリーズは、2チャンネルのSOP8パッケージ品、MSOP8パッケージ品、4チャンネルのSOP14パッケージ品、SSOP-B14パッケージ品の4種がある。いずれも電源電圧は3.0〜36V。入力オフセット電圧は、±2mV(典型値/最大値は±6mV)、入力電圧範囲はVEE〜VCC−1.5V、動作温度範囲は−40℃〜+125℃。消費電流は2チャンネル品が0.5mA、4チャンネル品が0.7mAとなっている。いずれも車載信頼性規格の「AEC-Q100」に対応している。
ロームでは、BA8290xYxx-Cシリーズと同一チップを使用した産業機器向け製品の開発を行っており、まもなくサンプル出荷を開始する方針。さらに車載向けノイズ設計フリーオペアンプとして、BA8290xYxx-Cシリーズよりも高速対応の製品開発も実施していくとしている。
なお、ロームは2017年10月3〜6日の会期で開催される展示会「CEATEC JAPAN 2017」(会場:千葉市・幕張メッセ)の同社ブースでBA8290xYxx-Cシリーズをデモンストレーションを交えて紹介する。
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