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「MRAMの導入は速く進む」 STTが強気な見解市場の見通しは明るい(1/2 ページ)

MRAMを手掛ける数少ない新興企業の1つSpin Transfer Technologies(STT)は、MRAMの根本的な課題を解決する技術の開発を進めているという。CEOに着任したばかりのTom Sparkman氏は、「MRAMの導入は、予想よりもはるかに速く進むのではないか」との見方を示す。

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MRAMを手掛ける数少ないスタートアップ


STTのTom Sparkman氏

 MRAM(磁気抵抗メモリ)技術開発を手掛ける数少ない新興企業の1つであるSpin Transfer Technologies(STT)は、2017年7月に新CEOに就任したTom Sparkman氏の指揮の元、今後の戦略を少しずつ調整していく考えであることを明らかにした。Maxim Integrated ProductsとSpansionの経営幹部を務めた経歴を持つ人物である。

 STTは現在も、pMTJ(垂直磁化トンネル接合)をベースとした、OST-MRAM(垂直スピン注入磁化反転型磁気メモリ)の開発に取り組んでおり、北米やアジアの潜在顧客向けに、継続的にMRAMデバイスのサンプル出荷を行っている。しかしSTTは、機能的なMRAMを提供するための取り組みの他にも、同社が「MRAMエンジン」と呼ぶ技術を製品化し、それをSTT-MRAM(スピン注入磁化反転型磁気メモリ)アレイに組み込むことにより、MTJ技術の本質的な欠陥を修正し、MRAMの性能を高めるための計画を立てているという。


STTが2016年に発表した、幅20nmのpMTJの断面図 出典:STT

 Sparkman氏は今回、STTのCEOへの就任以来初めてとなるEE Timesのインタビューの中で、「MRAMエンジンに関しては現在、特許を取得するための取り組みを進めているため、その後で詳細を発表する予定だ」と述べ、MRAMエンジンについて多くを語らなかった。しかし同氏は、「SanDiskが2000年代初めに、独自のNAND型フラッシュメモリ向けのメモリアレイ構成『ABL(All Bit Line)』を開発したのと同様に、MRAMエンジンも、本質的な欠陥を持つMRAM技術に対し、その性能と信頼性を高められるようなメカニズムを提供することができると確信している」と述べる。

 かつては課題が多かったNANDフラッシュは今や、携帯電話機をはじめとするさまざまな分野の主要技術となり、2017年の市場規模は500億米ドルに達する見込みである。

 MRAMエンジンのアイデアは、STTがこれまで何年もの間、MRAM技術の本質的な欠陥を修正するための手段として扱ってきた技術から生み出されたという。MRAMの最も大きな課題の1つは、いかに書き込みエラーを抑えるかという点である。Sparkman氏は、「STTのエンジニアたちは、MTJのあらゆる欠陥を修正することができるエキスパートだ」と述べる。

 Sparkman氏は、就任してから数カ月の間に、STTにとって本質的に新しい戦略を推進していくことに加え、微細化の限界という根本的な問題に直面しているDRAMとNANDフラッシュを、MRAMで置き換えていきたいとし、前任者だったBarry Hoberman氏よりもはるかに強気な展望を示している。

 Hoberman氏をはじめとする多くの業界関係者たちは、「MRAMは、スタンドアロンのDRAMおよびNANDフラッシュの巨大市場に対して実際に何らかの影響を及ぼすようになる前に、組み込みメモリ技術として、そしてSRAMの代替として、もっと早く成功を収めることができるだろう」と確信しているようだ。

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