自動運転車は“共有”されなければ無意味だ:自動運転車、なぜ必要?(前編)(1/2 ページ)
自動運転車の開発が加速する一方の今、「自動運転車が、なぜ必要なのか」について、あらためて考えるべきなのかもしれない。フランスの新興企業AutoKabは、走行距離ベースの自動運転サービスを、公共交通機関向けに展開しようとしている。
自動運転車は「なぜ」必要なのか
自動運転車は現在、ハイプサイクルのトップに位置付けられているため、われわれは毎週のようにロボットカー関連のニュースを耳にしている。2017年11月6日の週だけでも、WaymoとNavyaの2社が、それぞれロボットタクシーの開発計画について発表したところだ。しかし、その後困ったことに、事故が発生したという。
Navyaが米国ラスベガスにおいて、自動運転シャトルバスのサービスを開始したその日に、接触事故を起こしてしまったのだ。
メディアや、エンジニアリングコミュニティーなどの業界はこのところ、「ロボットによって運転席を奪い取られてしまうのではないか」という単純な考えから、固唾(かたず)を飲んで様子をうかがっている。エンジニアたちの多くは、AI(人工知能)の処理能力が向上し続け、クラウドの力によってコネクテッドワールドの可能性が高まっていくという状況に、圧倒されている。
自動運転車関連のマーケティングでは現在、「高性能自動運転車が実現すれば、道路上の安全性が高まり、人々がもっと効率的に働けるようになる。また、自動車の数が減れば、都市部の渋滞が解消し、環境の美化にもつながる」という決まり文句が広まっている。
しかし、われわれは実際のところ、このような理想的な主張の多くをサポートできるような証拠やデータ分析を、まだ確認できていない。技術業界は、さらなる大規模化と高速化、スマート化を実現可能な技術を推進していくことに必死で、それをメディアが、チアリーディングチームのようにサポートしている。
自動運転に関しては、ほとんどの専門家たちは基本前提に関する分析を行っておらず、「そもそもなぜ自動運転車が、何のために必要なのか」という質問を投げかけることもなかった。このような質問は、はるか以前の初期の段階で提示されているべきだ。
20年に及ぶ自動運転車開発
EE Timesは2017年11月、新興企業AutoKabのCEO(最高経営責任者)であるCarlos Holguin氏と、プレジデントであるMichel Parent氏にインタビューを行った。同社は、フランス国立情報学自動制御研究所(INRIA:Institute for Research in Computer Science and Automation)のキャンパス内に拠点を置き、安全性の高い隊列走行が可能なオートメーションの実用化に向けて取り組んでいる。INRIAの本部は、NATO(北大西洋条約機構)の軍事部門の中央司令部跡地にある。
AutoKabは創業わずか2年の新興企業だが、公共交通計画や道路車両のオートメーション、操作などの分野において20年以上にわたる実績を持つ人物が、創業メンバーに名を連ねている。
AutoKabの研究開発施設は、過去20年の間に製造および使われてきた旧型の自動運転シャトルバスやゴルフカート、乗用車などで埋め尽くされたガレージのようで、さながら自動運転車の博物館といった様相だ。
Michel Parent氏は、その職業人生の半分を、米スタンフォード大学(Stanford University)や米マサチューセッツ工科大学(MIT)、INRIAなどでの研究に、そして残りの半生を、ロボット工学産業の研究に費やしてきた人物だ。同氏はこれまで、輸送の自動化について熟考してきたとしながら、「もちろん、私も20年前は、人間と同じように自動車を運転することができるロボットを開発しようと考えていた。しかしやがて、『果たしてそれは楽しいことなのだろうか』と思うようになった。われわれは、どのような問題を解決しようとしているのかを自問する必要がある」と述べている。
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