SSPDが支える将来のIT、量子暗号や衛星光通信へ活用:NICTは小型化、高機能化で勝負
情報通信研究機構(NICT)は、「NICT オープンハウス 2017」で、高性能超伝導単一光子検出(SSPD)システムの技術要素について展示を行った。
量子暗号や衛星光通信の実現にはSSPDがカギ
情報通信研究機構(NICT)は、2017年11月9〜10日に「NICT オープンハウス 2017」を開催し、同機構の研究成果についてパネル展示や講演を行った。その1つとして高性能超伝導単一光子検出(SSPD)システムを紹介し、SSPD開発におけるNICTの技術力をアピールした。
単一光子は量子的な性質を持ち、量子暗号や量子を用いた衛星光通信の媒体としての利用や、バイオ資料の蛍光分析、半導体欠陥検査など多様な工業応用が可能とされる。よって、単一光子の発生やその検出技術の研究は、急速な進歩を見せており国際的にも注目を集める技術領域だ。
単一光子検出に用いられていた従来の技術としては、光電子増倍管(PMT)を用いる方法や、InGaAs APD(インジウム・ガリウム・ヒ素 アバランシェフォトダイオード)などの半導体を用いる方法があるが、これらの方法は、検出効率が低い、ノイズである暗計数率が高いといった理由から、工業応用には不向きという問題があった。
SSPDは上記の問題を解決できる単一光子検出技術で、高検出効率、低暗計数率、高時間分解能が特長だ。NICTが開発を進めるSSPDは、受光部を2.2K(−271.1℃)程度に冷却し、15×15μmサイズの受光素子に配置された厚さ4nm、線幅100nmの窒化ニオブ(NbN)ナノワイヤを超伝導状態へ転移させバイアス電流を流す。受光素子内へ光子が入射すると、その領域にホットスポットが形成されることでナノワイヤが常伝導状態へ転移する。その時に生じる抵抗を計測することで単一光子を検出できる。
SSPDは、世界の研究機関で開発競争が繰り広げられているが、NICTでは量子暗号研究への適用を目的として研究を始めたという。他の機関と比較してNICTのSSPDは、交流100Vで運転する受光部冷却用の小型冷凍機を採用したことによる検出システムのコンパクト化と、受光素子の多ピクセルアレイ化、超伝導単一磁束量子回路を用いたSSPD用極低温信号処理回路の適用によるSSPDの高機能化が強みだとする。
NICTは今後のSSPD開発方針に関して、さらなる検出効率や応答速度の向上と暗計数率の低下を目指すとし、ノイズとなる黒体放射の影響を除外する受光素子構造の開発や、多ピクセルアレイSSPDにおいて信号読み出し用ケーブルによる受光部の熱損失低減に取り組んでいくとした。
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