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ここまできた!日本のエネルギーハーベスティング熱電素子から下水監視の展示まで(1/3 ページ)

「Embedded Technology 2017(ET2017)/IoT Technology 2017」で、エネルギーハーベスティングコンソーシアムがブースを出展。エネルギーハーベスティング技術を持つ国内企業、団体が共同展示を行った。

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ET2017で展示された日本のエネルギーハーベスティング技術

 「エネルギーハーベスティングは“ちりも積もれば山となる”を地で行く技術だ」

 「Embedded Technology 2017(ET2017)/IoT Technology 2017」(2017年11月15〜17日、パシフィコ横浜)で、エネルギーハーベスティングコンソーシアムがブースを出展。エネルギーハーベスティング(環境発電)技術を持つ国内企業や団体が共同展示を行った。記事冒頭の言葉は記者がブースを取材した際に、応対した技術者達が口をそろえて語った言葉だ。

 エネルギーハーベスティングは、周囲環境に存在するエネルギー(光、熱、振動など)を発電素子により電力として“収穫”する技術。収穫できる電力は、電力は、数マイクロワットから数ワットオーダーと微量だが、センシングや通信機能の省電力化が急速に進む現在では、IoT(モノのインターネット)ソリューションの電源として十分に役割を果たすことができる。

 欧米企業の攻勢が目立つ本技術だが、本記事ではブースに共同出展を行った企業、団体の展示内容をピックアップし、国内技術の動向をダイジェスト形式で紹介する。

産総研の酸化物熱電素子は高耐熱、低コストがウリ

 産業技術総合研究所(産総研)は、高耐熱の熱電素子と素子を組み込んだ空冷式熱電発電装置を展示した。この空冷式熱電発電装置は、ET/IoT Technology AWARD 2017 特別賞を受賞しており、多くの来場者から注目を集めていた。


産総研が開発した熱電素子(クリックで拡大)

 開発した熱電素子は、p型材料にカルシウム・コバルト酸化物(Ca3Co4O9)、n型材料にカルシウム・マンガン酸化物(CaMnO3)といった酸化物熱電材料を採用し、800℃の高温雰囲気下でも安定して発電する高温耐久性と低コスト化を両立。加熱温度にもよるが、40×50cm程度のモジュールでキロワット単位の発電性能を達成できるという。

 この熱電素子の冷却にヒートパイプおよび放熱フィンを組み合わせた新開発ヒートシンクを採用した空冷式発電装置は300〜800℃の温度域で動作が可能。水冷式で必要だった設置工事を簡素化できる。また、空冷に必要なファンは装置が発電する電力で駆動するため外部電源は不要になり、工業炉や焼却炉やバイオマスなどの小規模排熱利用に最適だとする。

 本装置の実験で、たき火の上にかざすとスマートフォンの充電が行えたとして災害利用にも有効なことが確認できたという。今後は、熱電素子やヒートシンクなど発電装置に必要なサプライチェーンを整備し、2020年頃の実用化を目指す。


空冷式熱電発電装置の動作デモ(クリックで拡大)

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