Appleが電力管理ICを自社開発か、Dialogに打撃も:株価は1日で急落
Appleが、電力管理ICを自社で開発する可能性があるという。これによって大打撃を受けるとみられるのが、iPhoneの電力管理ICのサプライヤーである英Dialog Semiconductorだ。
Appleが電力管理ICの自社開発を目指している?
Appleが2018年に、電力管理チップを独自開発するのではないかとの臆測が流れている。同チップの主要サプライヤーであるDialog Semiconductor(以下、Dialog)にとっては、悪い知らせだといえるだろう。
日経新聞の2017年11月30日付の記事によると、Appleは早ければ2018年に、「iPhone」向けの電力管理チップを独自開発する予定だという。匿名筋の情報による今回の報道を受け、Dialogの株価は、たった1日で約18%も下落したという。
Appleが電力管理チップを自社開発するといううわさが流れるのは、今回が初めてというわけではない。2017年4月には、ドイツの銀行Bankhaus LampeのアナリストであるKarsten Iltgen氏が、「Appleが、Dialogの製品を少なくとも一部置き換えようと、電力管理チップの独自開発を進めているという有力な証拠が見つかった」と警告したことを受け、Dialogの株価が20%下落したことがある。
2017年初めには、「Appleは、Imagination Technologies(以下、Imagination)製品を置き換えるべく、グラフィックスチップを独自開発しているようだ」という報道が流れ、Imaginaionの株価が急速に下落。結局、中国政府のバックアップを受けるCanyon Bridge Venture Partnersによる買収に合意するという結果になった。この買収金額は約6億7500万米ドルで、現在まだ手続きが完了していないという。
市場調査会社IHS Markitでパワー半導体担当シニアアナリストを務めるKevin Anderson氏は2017年11月30日、EE Timesのインタビューの中で、「Appleが電力管理ICを自社開発するという動きは、iPhoneの電力管理とアプリケーションプロセッサおよびバッテリーとの関係性を見れば、理にかなっているといえる。Appleには、コストなどのさまざまな理由とは関係なく、可能なものはすべて自社開発するという傾向がある」と述べている。
Anderson氏によると、Dialogの売上高全体に占めるAppleの割合は、2015年には80%だったが、2016年には約74%に減少したという。主な要因としては、Dialogが、合併買収などによって製品ポートフォリオを多様化させる取り組みを進めてきたことが挙げられる。
Dialogの広報担当者は、EE Timesとの電子メールのやりとりの中で、「当社の主要顧客の設計サイクルに関する可視性レベルは、ほとんど変化しておらず、ビジネス関係も通常と変わらない状況にある」と述べている。
Anderson氏は、「Dialogの製品は、Apple Watchなどをはじめ、Appleの製品ポートフォリオ全体に普及している。このため、Appleが直ちにDialogをサプライヤーから外すとは考えにくい」と付け加えた。
Dialogのモバイル以外の事業は、同社のモバイル事業よりも速い速度で成長しているとはいえ、Appleのサプライヤーから除外されるとなると、Dialogにとっては大きな打撃になることは間違いない。「売上高の74%も占めるビジネスの代わりになるようなものは、すぐには見つからない」(Anderson氏)
EE Timesはこの件に関してDialogにコメントを求めたが、返答はない。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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