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IoTデバイスに共通のセキュリティ基盤を、Arm「PSA」1兆台がつながる時代に向け(1/2 ページ)

Armは2035年に1兆台のデバイスがIoT(モノのインターネット)で接続する世界を目指す。しかし、膨大なデバイスが登場するということは膨大なベンダーが多種多様の異なる方法でArm IP(Intellectual Property)を実装することを意味する。そのような状況でも同等のセキュリティレベルを実現する共通プラットフォームについて、そのメリットを訴えた。

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アームがテクノロジーカンファレンスを開催

 アームは、2017年12月8日にテクノロジーカンファレンス「Arm Tech Symposia 2017」を東京カンファレンスセンター・品川で開催した。その基調講演では、アーム社長 内海弦氏のあいさつから、ゲストスピーカーのソフトバンク代表取締役副社長兼COO(最高執行責任者)今井康之氏によるIoT(モノのインターネット)の導入事例紹介、同じく日産自動車フェロー久村春芳氏による自動運転開発の最前線事情の説明に続いて、Armが現在重視しているセキュリティ、AI(人工知能)と機械学習、そして、ディスプレイソリューションにおける取り組みを英Armから来日した担当幹部がそれぞれ解説した。

 この記事では、ちょうど1年前の2016年12月2日に開催した「ARM Tech Symposia 2016 Japan」で「これから最も重要になる」と言及していたセキュリティの取り組みについて、Armが業界共通のフレームワークを目指して整備を進めている「Platform Security Architecture」(以下、PSA)の内容を英Arm戦略担当上級役員のNoel Hurley(ノエル・ハーレー)氏の基調講演とその後に行った記者説明会における説明から紹介する。

“1兆台”IoTデバイスのセキュリティを担保する「PSA」


英Arm 戦略担当上級役員のNoel Hurley氏

 Hurley氏は、「セキュリティはオプションであってはならない」という言葉とともにArmのセキュリティに対する取り組みの具体的な成果として、PSAとその概念を導入したセキュリティシステム向けレファレンスを紹介した。

 PSAは、IoTによってネットワークに接続するデバイスをユーザーが安全に使えるように、全てのデバイスで共通して適用すべきセキュリティ対策の“枠組み”に相当する。Armは、PSAに準拠したレファレンスファームウェアとして「Trusted Firmware-M」をオープンソースとして公開した。

 Armがセキュリティを重視する1つの理由として、Arm IP(Intellectual Property)の出荷数の急増が挙げられる。Arm IPは、1991年の創業以来、2013年まで22年をかけて500億個が出荷されている。ところが、その後、同じ500億個を出荷するのに2017年までのわずか4年間しかかからず、さらに、この先の4年間の2021年までには、創業から2017年までに出荷してきた数と同じ1000億個に達するという、出荷数の急激な増加が予想されている。IoTの普及によって、インターネットに接続されるArm IP搭載デバイスがさらに増加を続けることになると、全てのデバイスに対してセキュリティ対策を施すことが非常に重要な課題になるとArmは考えている。


このネットワークに接続するデバイスの急激な増加と膨大な数がArmにセキュリティを最重要課題として認識させるようになる(クリックで拡大)

17年前から続く、セキュリティへの取り組み

 Armのセキュリティに対する取り組みは、2000年の「SecureCore」(スマートカードでセキュリティを実現する制御プロセッサ)の投入から始まり、続いてArmが開発したセキュリティ技術「TrustZone*)」を「Cortex-A」に導入したIPを発表。さらに、スマートカードのセキュリティ技術の標準化団体GlobalPlatformが提唱した「TEE」(Trusted Execution Environment)に対応した「TEE for Cortex-A」を発表している。

*)TrustZone:プロセッサがアクセスするメモリ領域を、汎用OSが使用する領域とセキュリティ制御専用OSが使用する領域に分割し、攻撃に耐えうるようにしている技術。

 最近では、スマートフォンなど省電力を重視したIPラインアップARMv8-MでもTrustZoneを導入(Cortex-M33、Cortex-M23のオプション構成)した他、組み込みIoT向けプラットフォーム「Mbed」や暗号化機能を組み込んだセキュリティIP「CryptoCell」とその上位版の「CyptoIsland」を投入している。

左=Armは2000年からセキュリティ機能の実装を進めてきた/右=2017年10月に米国で開催した「Arm TechCon」で発表した新しいセキュリティへの取り組み(クリックで拡大)

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