「1ドルのセンサーがあれば」 IoT化狙うWalmart:ビジネスモデルを変えたい(1/2 ページ)
米大手スーパーのWalmart(ウォルマート)が、1米ドルを切るセンサーの実現を熱望している。スーパーマーケットの業界もIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)に強い関心を寄せているのだ。
「1ドルを切るなら数百万個を調達したい」
米国の大手スーパーマーケットWalmart(ウォルマート)でデジタルエンタープライズソリューション部門担当バイスプレジデントを務めるChris Enslin氏は、価格が1米ドル未満のIoT(モノのインターネット)向けセンサーの実現を切望している。希望通りのセンサーであれば、1年間当たり数百万個を調達したい考えだという。
同氏は今回、インタビューの中で、IoTや機械学習を始めとするさまざまな分野について、自身の考えを語った。同氏の欲しい物リストの中で、最も興味深いアイテムとして挙げられるのが、「良質で安価なセンサー」だ。
Enslin氏は、「当社のような規模の企業にとって、貼り付けられるセンサーの価格は、いまだに高過ぎる。センサーの電池寿命は一般的に、12〜18カ月程度しかないため、できればエネルギーハーベスティング技術で動作し、動きや熱、振動を感知することが可能なセンサーを、かなりの安価で入手したいと考えている」と述べる。同氏はWalmartにおいて、IoTやロボット工学、AI(人工知能)などの分野に取り組む開発チームで、500人のメンバーを率いているという。
「一部の店舗では、BOM(Bill of Material)が10米ドルを下回るセンサーを使用しているが、当社のように約1万2000に上る店舗を持つ企業にとっては、価格が高い」(同氏)
Enslin氏は、「このようなセンサーは理論上、販売する全ての製品に取り付けられる。将来的に、IoTに対応した製品を実現できれば、例えば消費者が、購入した製品が残り少なくなった時に、自宅から注文するといったことも可能になると考えている」と付け加えた。
大学院生と共同開発を進める
Walmartは、このようなセンサーの実現に向け、複数の大学の大学院生との間で共同開発を進めているという。その一方で、Walmartは2017年に、米国内の約5000店舗において、同社にとって初となるIoT技術を導入したという。
Enslin氏は、「当社は現在のところ、IoTの使い方に関しては完全に初心者だ。エンドツーエンドのプラットフォームの潜在能力も、うまく引き出せていない。当社の店舗では、冷蔵庫に、熱センサーや振動センサー、カラーセンサーを搭載したり、コードを読み取るためにコンピュータビジョンを採用したりすることで、ストリーミング分析を行っている。これによって予知保全や、食品の安全性の確認などができる。物流管理システムの置き換えも図っている」と述べる。
Walmartは次のステップとして、米国以外の各国店舗に、“冷蔵庫ネットワーク”を展開していきたい考えだという。また、LEDライトを使用する方法も検討しているようだ。
「当社くらいの規模になると、電球を交換するだけでも損益に関わってくるので、研究チームのエンジニアたちは、LEDをビーコンとして使用することを検討している。また、ネットワークにつながる“スマートシェルフ(商品棚)”とコンピュータビジョンとを組み合わせれば、さまざまな用途に使えると考えている」(Enslin氏)
Enslin氏が率いる開発チームのメンバー500人のうち約80%が、コンピュータ科学者やエレクトロニクスエンジニアだという。その多くは、旧型センサーのファームウェアをアップデートすることで新機能を搭載するなどの作業に携わっている。
Walmartは長期的に、十分なIoTデータを収集することにより、デジタルモデルの店舗を構築したいと考えだという。このようなモデルは、最適な商品配置方法を決定する上で、非常に役に立つだろう。
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