ドライバーの意図はくめない? 自動運転の課題:交通規則には従えても(1/4 ページ)
2017年は自動運転技術の開発が、さらに加速した1年となった。公道での試験運転が増えるにつれ、「交通規則には従えても、人間のドライバーの意図にはほとんど従えない」ことが露呈してきた。
ドライバーの意図は読み取れない?
2017年に数々の自動運転車(ロボットカー)が登場し、ますます多くの注目を集めるようになった。自動運転車はもはや、特に目新しい存在ではないといえるだろう。
しかし、こうした自動運転車が、公道で試験運転を行った結果、根本的な弱点が露呈することになった。その中でも最も重要なのが、「ロボットカーが、交通規則に正確に従うことができる機能を備えているにもかかわらず、人間のドライバーの意図を読み取る能力が、ほとんどない」ことが明らかになった点だ。米国の市場調査会社であるThe Linley Groupでシニアアナリストを務めるMike Demler氏も、「ロボットに“常識”を持たせることができるプログラミング方法など存在するのか」と疑問を呈している。
2017年に、自動運転車に関する報道が何度かなされているが、致命的ではないながらロボットカー事故に関する報道もいくつかあった。
米マサチューセッツ工科大学(MIT)の高齢化研究所(AgeLab)と米国ニューイングランド自動車記者協会(The New England Motor Press Association)は2016年に、約3000人を対象として消費者調査を行い、自動運転車に対する興味の有無について質問している。その結果、全体の約半数となる48%の人々が、「完全な自動運転車を購入するつもりは全くない」と回答したことが明らかになった。回答者たちは、「自分で運転をコントロールできないことに違和感があり、技術を信用することはできない。自動運転車の安全性も十分だとは思えない」と述べているという。
つまり、エンジニアではない消費者の多くが、自動運転技術に対して懐疑的であり、不信感を抱いているのだ。
しかし、技術メーカーや自動車メーカーは全く動じていないようだ。消費者に受け入れられるかどうかについては関心を持たず、少なくとも近い将来、消費者向けに大量の自動運転車を販売したいとも考えていない。消費者からの信頼に関わる「機械vs人間」という厄介な問題への対応を、先延ばしにすると決めたようだ。
レベル4の自動運転車の開発が加速
その代わりということなのか、ロボットカー向けの強力なビジネス事例として、フリート車両としての所有・運転が可能な自動運転車を次なる目玉に掲げているようだ。WaymoやUber Technologies(Uber)、General Motors(GM)、Ford Motors(Ford)などのメーカー各社が2017年に、自社の自動運転車向けの主要な市場としてフリートサービスに注力しているという事実が明確になった。
技術顧問サービスを手掛けるVision Systems Intelligence(VSI Labs)の創業者であり、主席アドバイザーを務めるPhil Magney氏は、EE Timesの取材に応じ、「2017年は、レベル2(部分的な自動運転)の自動運転車向けに、ADAS(先進運転支援システム)や、さまざまなセンサー技術が段階的な発展を遂げた年だった。レベル4(高度自動運転)の自動運転車に関しては、業界において2016年に期待された他のどの技術よりも速いスピードで移行しているという状況にある」と述べている。
市場調査会社であるIHS Markitでインフォテインメント&ADAS部門でリサーチディレクターを務めるEgil Juliussen氏は、Magney氏の見方に同意する。Juliussen氏は、「中でもWaymoは、いつの間にか自動運転車市場において先導的な役割を担うようになり、他のどの企業よりもはるか先を行っている。同社は、米国アリゾナ州フェニックスの公道で、安全確保のためのドライバーを同乗させることなく、完全な自動運転車の走行を確実に開始できるとしている。これは、2017年における最も重要なマイルストーンの1つだ」と述べている。
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