人間の手を徹底的に模倣して生まれたロボットハンド:モーター1個で動くシンプルさ(1/2 ページ)
最小でモーター1個という極めてシンプルな制御で動かせるロボットハンドが登場した。人間の手を、骨格から腱まで徹底的に模倣したという。
骨格から腱まで徹底的に模倣
ペットボトルをつかむ。シュークリームをつかむ。工具をつかむ。ストローをつまむ――。人間にとって、形状や柔らかさ、重さが異なる物をつかむことは造作もない簡単な動作だ。ところが、ロボットにとって、これは大変難しい作業になる。そのため、従来のロボットハンドでは、指の1本1本あるいは関節の1つ1つにセンサーやモーターを組み込み、つかむ対象に合わせてそれらを制御するというのが一般的だった。
だが、この手法では多数の電子部品を制御する複雑なプログラムが必要になるので、システムが巨大化する上にコストもかかる。構造が複雑なので、不具合が起きた時の対処にも手間がかかってしまう。こうした課題が、ロボットハンドを産業分野で利用する上で障壁となっている。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とダブル技研、東京都立産業技術高等専門学校(以下、都立産業技術高専)は2018年1月11日、上記の課題解決の糸口となりそうな、単純な制御でさまざまな物をつかむことができるロボットハンドの構造「からくり」を開発したと発表した。NEDOからの委託研究として、都立産業技術高専がロボットハンドを開発し、ダブル技研が商用化を担う。
からくりは、人間の指と手の構造を徹底的に模倣した構造だ。骨格、関節、腱の微妙な構造を工学的に模している。人間の手のように、全ての関節がリンクし、協調して動くようにもなっている。例えば、小指を手のひら側に曲げると、その動きに引っ張られるように薬指も手のひら側に曲がるが、からくりでも同じような動きを再現できる。開発した3社はこれを「協調リンク機構」と呼ぶ。
わずか1個のモーターで制御可能
からくりの最大の特長は、指の付け根にある関節(医学的にはMP関節と呼ぶ)の部分を引くと、関節だけが連動して曲がり、指の腹が物体に接触してつかむ、という点である。つまり、関節全てにセンサーやモーターを取り付けなくても、MP関節のところにだけモーターを付ければ済むのである。
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