あなたは“上司”というだけで「パワハラ製造装置」になり得る:世界を「数字」で回してみよう(46) 働き方改革(5)(5/12 ページ)
今回のテーマは「労働環境」です。パワハラ、セクハラ、マタハラ……。こうしたハラスメントが起こる理由はなぜなのか。システム論を用いて考えてみました。さらに後半では、「職場のパフォーマンスが上がらないのは、上司と部下、どちらのせい?」という疑問に、シミュレーションで答えてみます。
テレワークよりもはるかに深刻な、「ハラスメント」という問題
さてここからは、職場環境における(テレワークよりはるかに深刻な)問題として、「職場のハラスメント」について考えてみたいと思います。
「ハラスメント」とは、嫌がらせや相手を不快にさせる行動のことです。
職場でのハラスメントには、セクシャルハラスメント(セクハラ)、マタニティハラスメント(マタハラ)、パワーハラスメント(パワハラ)の他、モラルハラスメント、アルコールハラスメント、ジェンダーハラスメント、アカデミックハラスメントなど、一説には32種類ほどあるとも言われています。
今回、私は、これらのハラスメントに対する「当事者の苦情」「加害者への非難」「会社の不実な対応」「社会の無理解」などに関する内容については、全てスルーすることにしました。その類(たぐい)の話は、私がここで書かなくても、ネットや書籍に山ほど資料やデータがあるからです。
私は今回、(1)エンジニアリング観点から、ハラスメントが発生する原因と、(2)社会が用意しているハラスメントを抑制する機能(ファンクション)および、その機能を用いたハラスメントへの報復……もとい、防止方法を考えてみることにしました。
まず前提として、職場のハラスメントが、基本的には誰も幸せにしないという事実を、ざっくりとまとめてみました(詳細は割愛します)。
しかし、これだけのデメリットがありながら、ありとあらゆる組織において、ハラスメントは日常的に、普通に発生しています。こういう状態を「悪い」とか「間違っている」と叫ぶだけでは、この問題の本質は見えてきません。
「ハラスメントは組織運営において有用」という仮説を立ててみる
そこで、私は今回、発明のネタ出しで使っている手法*)を用いて、「ハラスメントは組織運営において有用」であるという仮説を立てて、その上で、組織をシステムの集合体(システム of システムズ(SoS))と見なして考えてみることにしました。
*)著者ブログ:「中二病的発想アプローチを用いることを特徴とする発明創成手段」
あらゆる組織は、階層的(ヒエラルヒー)に構成されています。これは、指揮命令の流れがコントロールされ、権限と責任の所在が明かになるという機能があります。
実際、そのような機能がない組織は、事実上、稼働しないからです。
組織が階層構成になっている以上、組織はアッパー(上位)システムとサブ(下位)システムのSoSとして把握することができます(中間管理職は、この両方の任務を負います)。
ところが、この2つのシステムは、全く異なる性質を有しています。そもそもシステムの稼働目的(またはKPI: Key Performance Indicator)が違うのです。
サブシステム(部下)は、基本的に自分の職掌範囲の任務達成のみに注力するように稼働しますが、アッパーシステム(上司)は、サブシステムそれらのサブシステムのパフォーマンスを組み合わせて、システム全体としての目標(利益の追求)を達成するために稼働します。
組織の目的に近い任務を追うアッパーシステムには、当然として、サブシステムをコントロールする権利能力が与えられています。これが業務命令です。
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