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車載半導体首位・NXPの製品/技術戦略を幹部に聞く迫るQualcommとの統合(2/3 ページ)

車載半導体シェア首位ながら、Qualcommによる買収を間近に控えるNXP Semiconductors。今後、どのような車載半導体ビジネス戦略を描いているのか。同社オートモーティブ事業部門の最高技術責任者(CTO)を務めるLars Reger氏に聞いた。

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自動運転へのアプローチ

EETJ 自動運転の実現には、これまでの自動車にはない新たな機能を追加する必要があります。

Reger氏 従来の自動車は、「パワートレイン」、「車体制御」、「カーインフォテインメント」という3つのドメインで構成されていた。ここに、「コネクティビティ」と、ドライバーにとって代わって運転を担う「ドライバーリプレイスメント」の2つのドメインが追加される。

 また各ドメインは、検知/検出する「Sense」、判断する「Think」、判断に基づき動く「Act」の3つに分類される。さらに、各ドメインはハーネスで結ばれ、それらをルーティングするゲートウェイも各ドメインに必要になる。


NXP Semiconductorsが定義する車載半導体のアプリケーション (クリックで拡大) 出典:NXP Semiconductors

 これからの自動車に必要になる要素も含めて、NXPはカバーし、そして多くの部分でNXPはシェア1位を取得している。言い方を変えれば、完全なクルマを構築できるほどの製品がNXPにはそろっている。

Qualcommとの統合で、さらにラインアップ強化

EETJ コネクティビティ、ドライバーリプレイスメントの部分での製品展開状況を教えてください。

Reger氏 コネクティビティの部分で分かりやすい例が、スマートアンテナがある。スマートアンテナには、自動車が必要とする通信機能がほとんどが盛り込まれる。現状、NXPはラジオチューナーに、V2X用の通信チップ、さらには高いシェアを持つスマートキー用の通信チップもある。携帯電話通信やWi-Fi、Bluetoothといった通信チップについては、まもなく完了する見込みのQualcommとの統合でそろうことになる。この他、スマートアンテナには、電源ICや、アプリケーションプロセッサが必要になるがそれらもNXPは提供している。

 ドライバーリプレイスメントの頭脳の部分に関しては、車載コンピュータユニット「BlueBox」を持っている。ただ、こちらもQualcommと一緒になれば、QualcommのSnapdragonの技術などのノウハウを取り入れ、一層、強化されることになる。

 ただ、注意しなければならないのが、頭脳、コンピューティングだけが優れていても、自動運転が行えないということだ。「いくら優れた頭脳を持ち合わせた人間でも、目隠しして運転することはできない」と言えば分かってもらえるだろう。

 NXPでは、人間の視覚に代わるレーダーの開発に取り組んでいる。これまでのレーダーは、チップが大きく高額なために普及の妨げになった。われわれは、CMOSミリ波レーダーチップを開発しており、近く提供できるようになるだろう。

ソフト開発負担軽減へ車載マイコンを一新

EETJ あらゆるドメインに必要で、車載半導体の中でも基本的なデバイスであるMCU/MPUでは、2017年10月に製品群を一新すると発表されました。

Reger氏 新たなMCU/MPUプラットフォーム「S32」は、互換をとるために全てArmアーキテクチャに統一し、基本的なペリフェラル、メモリインタフェースなども共通化し、S32のデバイス間であれば、ソフトウェアの90%を利用できるようにする。ソフトウェアの試験に長時間を要し、大きな負担になっている中で、こうしたソフトウェアの再利用性の高さは自動車業界に大きく貢献するはずだ。


「S32」ではCPUコアやペリフェラルを最大限共通化し、ソフトウェアの再利用性を高める (クリックで拡大) 出典:NXP Semiconductors

 同時に、全てのS32 MCU/MPUデバイスは、(自動車用機能安全規格である)「ASIL-D」に対応し、高度なセキュリティも担保されており、完全なOTA(Over the Air)機能もサポートしている。

 OTAについては、Tesla(テスラ)がその有用性を示してくれた。

 2016年は自動車の販売台数が過去最高に達したと同時に、リコールも過去最高の台数に達してしまった。各自動車メーカーは、ソフトウェアを改修するために、自動車を回収し書き換えを行う手間に追われた。そうした中で、TeslaはOTA機能を使い、無線通信経由でのソフトウェアの書き換えを実施し、OTAの有用性を証明した。

 実は他の自動車メーカーも、OTA機能を10年程前から市販車に搭載しているものの、その機能を活用していない。ハッキングなどへの備え、堅ろう性にいまひとつ自信が持てないことが、OTAを活用するまでに至っていない原因だ。

 現在、自動車メーカーは、S32のようなモダンなセキュリティ機能を備えた部品を手に入れて、OTAを実現したいという意欲を持っており、追い風だ。

EETJ S32の製品化予定をお聞かせください。

Reger氏 まず、2018年1〜3月中に最初の製品ファミリのサンプル出荷を開始する。その後、6〜8週間ほどおきに、新たな製品ファミリを投入する。おそらく、2018年末には主要な製品群のサンプルを手に入れられる環境が整うだろう。量産については2019年から順次開始する。

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