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北米ベンチャーへの投資、失敗した日本企業の“共通項”とはイノベーションは日本を救うのか 〜シリコンバレー最前線に見るヒント〜(22)(2/4 ページ)

新規事業開拓のために、これまで多くの日本企業がシリコンバレーのベンチャー企業と、投資を含む戦略的提携をしてきた。だが、これまで失敗した企業が多かったのも事実だ。失敗の要因を探ると、幾つかの共通点が見えてくる。

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新規事業の考え方の誤りと、意思疎通の不足

(1)「飛び地」に入ろうとして失敗

 多くの日本企業が多角化を進めたが、中には、自社の既存事業とは全く関連のない分野に進出しようとする企業もあった。「自社の既存事業分野は低成長なので、隣接分野も大きな成長は望めない。ならば、既存事業分野とは離れていても急成長している分野に参入しよう」と考えたのだ。このアプローチは「落下傘方式」とも呼ばれた。つまりは、やせた土地に住んでいる人が上空から肥沃な土地や新しいことが期待できる森に落下傘で降りていき、周りを見回しておいしい果実を手に入れる――というわけである。

 だが、この方法はことごとく失敗したといっても過言ではない。

 多角化の対象となった分野は急成長しているかもしれないが、その成長を自分も手に入れるだけの組織としてのスキル、社内の人材あるいは相乗効果を期待できる資産を持ち合わせていなかったのである。

 そのため、せっかくの素晴らしい技術をうまく新規事業に生かすことができなかった。教訓としては、「新規事業展開に当たっては、技術なり、製造力なり、販売チャネルなり、顧客ベースなり、これまで培った自社の力を何らかの形で生かせる分野を対象とすべきだ」といえるだろう。「飛び地」を目指すべきではなかったのである。

 本連載の第13回「創設12年で企業価値1200億円に、クボタの“多角化”を促したベンチャー」では、バイオ農薬の開発を手掛けていたベンチャーとの提携を進めたクボタの例を紹介した。この提携はうまくいったのだが、それは、農業機械を扱っていたクボタが、農薬を販売するチャンネルを持っていたからである。無関係の分野に見えても、既存の顧客ベースや販路を活用することができたからこそ、この提携は成功したといえる。実際、クボタが、何も資産を持ち合わせていなかったコンピュータ分野に進出しようとした際は、ことごとく失敗したのである。

(2)日本の本社と意思疎通がうまくいかない

 日本企業が事業の多角化を進めようと模索する中、日本の大企業はシリコンバレーに拠点を置くようになっていた。正確に言うのであれば、それ以前から、自社の製品を米国で展開するために、営業やサポート人員は置いていた。だがそれに加え、今度は新規事業の種になりそうなものを探す人員を派遣するようになったのである。

 ところが、これがなかなかうまくいかない。なぜなのか――。

 実は、新規事業開拓の目的で派遣される駐在員は、何らかの業務と“兼務している”場合が多かった。現地の営業のサポートや、日本から役員が来る時のアテンド業務など、要は雑用を担うことも多かったのである。「新規事業の案件を探しに来たのに、これでは旅行代理店の業務と同じだ」とこぼす人もいた。新規事業開拓をするには、あまりに中途半端だった。

 それでも、駐在員は種になりそうな案件を一生懸命に見つけて、本社に連絡する。だが、球を懸命に投げても一向に返事がこない。そのため、ようやく返事がきた時には、おいしい案件は他に持っていかれてしまっている。

 本社と駐在員の社内連携が、別の意味でうまく取れていないケースもみられる。駐在員は、“シリコンバレーのルールでゲームを進める”方法を覚えてきている。だが、そのやり方で本社とやりとりを進めようとすると、何もかもが遅く、フラストレーションがたまる一方なのだ。反対に本社側から見れば、「駐在員は妙に“アメリカかぶれ”してしまって、こちらの状況を理解していない」となる。駐在員がシリコンバレーに派遣されてからしばらくすると、本社と駐在員との間に、このような微妙なずれが生まれてしまうケースもあるのだ。


日本の本社と意思疎通がうまくいかないケースも、しばしばみられる(クリックで拡大)

 ただ、駐在員が、案件を持っていく先を誤っている場合もある。本社の事業開発部門ではなく、研究開発部門に“直球”を投げてしまうこともあるという。これは、明らかに投げる相手を間違えている。研究開発部門は、研究員やエンジニアたちが自分の技術開発を行うところである。外部の技術を評価する立場ではないのだ。研究開発部門にいくら案件を持っていっても、返事がもらえないのは当然といえよう。研究開発部門から見れば、いくら良い技術でも「自社の技術よりそちらの方が良い」と言った途端に、それは即、自己否定につながるので、たとえ返事が来たとしてもネガティブな内容になる可能性が高い。

 上記以外のケースとして、信じられないことに「本社が駐在員のことを忘れている」というのもある。シリコンバレーでの新規事業開拓に対するトップマネジメントの期待値が低く、駐在員の存在が頭から消えてしまっているのだ。

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