不揮発性メモリ(単体)の栄枯盛衰と埋め込み用途への展開:福田昭のストレージ通信(89) STが語る車載用埋め込み不揮発性メモリ(2)(1/2 ページ)
今回は、単体の不揮発性メモリ製品(スタンドアロンの不揮発性メモリ製品)について考察し、車載マイコンの埋め込み用メモリとしてNORフラッシュメモリ技術が使われている理由や、単体メモリと埋め込み用メモリの違いに触れる。
単体の不揮発性メモリ市場における主役の交代
国際会議「IEDM」の「ショートコース(Short Course)」から、車載用の埋め込み不揮発性メモリに関する講座「Embedded Non Volatile Memories for Automotive Applications」の概要をご紹介している。講演者は半導体ベンダーSTMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)のAlfonso Maurelli氏である。
なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
さて本シリーズの初回である前回では、車載用マイコン(マイクロコントローラあるいはマイクロコンピュータ)の用途と埋め込み不揮発性メモリの必要性をご説明した。第2回となる今回は、埋め込みメモリから外れ、単体の不揮発性メモリ製品(スタンドアロンの不揮発性メモリ製品)を扱う。
歴史を振り返ると、スタンドアロンで電気的にデータを書き込む不揮発性メモリ(注:以降は特に断らない限り「不揮発性メモリ」をこの意味で使用する)では、1970年代後半に紫外線消去型EPROM(以降はEPROMと表記)の市場が立ち上がった。そして、1980年代に標準型EEPROMの市場が立ち上がったものの、主流にはならなかった。
その後に登場したのがフラッシュメモリである。1990年代後半にはNORフラッシュメモリの市場が携帯電話端末向けに立ち上がり、一大市場を形成した。さらに、2000年代後半にはNANDフラッシュメモリの市場が立ち上がる。不揮発性メモリの市場は急速に膨張した。
スタンドアロンで電気的にデータを書き込む不揮発性メモリの市場規模。棒グラフ(左の縦軸)が金額(単位は10億ドル)の推移。折れ線グラフ(右の縦軸)が記憶容量(単位はエクサビット)の推移。出典:STMicroelectronics
NORフラッシュメモリの登場と普及は、EPROMの市場を縮小させた。現在では、EPROMの市場規模はほとんど皆無である。そしてNANDフラッシュメモリの登場と普及は、NORフラッシュメモリの市場を縮小させた。現在でもNORフラッシュメモリの市場は存在しているものの、その規模はNANDフラッシュメモリに比べると、はるかに小さい。
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