連載
多層配線工程に記憶素子を埋め込む不揮発性メモリ技術(後編):福田昭のストレージ通信(100) STが語る車載用埋め込み不揮発性メモリ(13)(2/2 ページ)
後編では、多層配線工程の中に記憶素子を作り込むタイプの埋め込み不揮発性メモリについて、その利点と、メモリセルの記憶素子を実現する技術を解説する。
MRAM、PCM、ReRAMが記憶素子の候補
メモリセルの記憶素子を実現する技術には、いくつかの候補が存在する。磁気抵抗メモリ(MRAM)、相変化メモリ(PCM)、抵抗変化メモリ(ReRAM)などである。いずれも記憶素子における抵抗値の変化をデータとして記録する。具体的には高抵抗状態(HRS)と低抵抗状態(LRS)である。
多層配線工程の中に記憶素子を作り込む埋め込み不揮発性メモリ技術の候補。左から磁気抵抗メモリ(MRAM)、相変化メモリ(PCM)、抵抗変化メモリ(ReRAM)。出典:STMicroelectronics(クリックで拡大)
これらの埋め込み不揮発性メモリ技術に関する研究開発は既に、それなりの歴史を有する。半導体メモリメーカーやマイコンメーカー、シリコンファウンダリなどが研究開発を手掛けてから、既に10年以上が経過した。しかし現在のところは、いずれの技術も埋め込み不揮発性メモリとしてフラッシュメモリに対抗するような兆しは見えていない。ごくわずかな半導体メーカーが商品化しただけだ。車載用埋め込みメモリに関しては、商品化事例は皆無に近い。
商品化事例が少ないことの大きな理由には、単体メモリとしての実績に乏しいことと、記憶容量当たりのコストでは依然としてフラッシュメモリに大きく水を開けられていることがある。そして車載用に関しては、高温環境における長期信頼性に不安が残る。今後の研究開発の進展に期待したい。
⇒「福田昭のストレージ通信」連載バックナンバー一覧
《次の記事を読む》
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 車載用の埋め込みフラッシュメモリ技術
今回は、大容量、具体的には車載用の埋め込み不揮発性メモリ技術を取り上げる。車載用の不揮発性メモリ技術は、1トランジスタのNORフラッシュ(1T NOR Flash)技術と、スプリットゲートフラッシュ技術に大別される。 - シリコンフォトニクスとは何か
今回は、「シリコンフォトニクス」技術を紹介する。そもそも「シリコンフォトニクス」とは何か、そしてその利点と課題について解説したい。 - 64kビットFRAM、−55℃の屋外でも動作を保証
富士通セミコンダクターは、−55℃という極めて低い温度環境での動作を保証した64kビットFRAM(強誘電体メモリ)「MB85RS64TU」を開発、量産出荷を始めた。 - FeRAMのメモリセル構造の基礎
強誘電体不揮発性メモリ(FeRAM)の構造には、2T2C方式、1T1C方式、チェインセル方式がある。それぞれの特徴を紹介するとともに、メモリセルの断面構造についても解説しよう。 - 書き換え100兆回、遅延ゼロで書き込めるFRAM
Cypress Semiconductor(サイプレス セミコンダクタ)は、車載システムや産業機器、医療機器などのデータ収集用途に向けた不揮発性メモリの新ファミリーを発表した。データの取りこぼしがなく、書き換え回数など耐久性にも優れている。 - イメージング、パワー…… これから注目の技術/座談会編3
IHS Markit Technologyのアナリスト5人がエレクトロニクス業界の未来を語り合う座談会編。第3回は、今、注目の技術について語ってもらう。