5G向けミリ波の性能は「期待以上」、開発に拍車:Brooklyn 5G Summit
National Instruments(NI)のIan Wong氏は、米国ニューヨーク州ブルックリンで開催された「Brooklyn 5G Summit」で、「5G(第5世代移動通信)におけるミリ波通信の有用性は高い。5年前には懐疑的な意見もあったが、ミリ波は想定以上に機能すると考えられる」と語った。
信号減衰は予想よりも低かった
National Instruments(NI)のIan Wong氏は、米国ニューヨーク州ブルックリンで2018年4月24〜27日(現地時間)に開催された「Brooklyn 5G Summit」で、「5G(第5世代移動通信)におけるミリ波通信の有用性は高い。5年前には懐疑的な意見もあったが、ミリ波は想定以上に機能すると考えられる」と語った。
同氏の意見は、5Gの無線方式「5G NR(New Radio)」に関するパネルディスカッション「Future X-Radio」の出席者の共感を呼んだ。5G向けミリ波通信はスタートを切ったが、全ての課題が解決したわけではない。NokiaのAntti Toksala氏は、「全てのパラメータを連携できるように、パラメータとその詳細を規定する必要がある。カギとなるのは相互運用性だ」と述べた。
5Gで使用が検討されているミリ波帯(28GHz、39GHz、70GHz帯)では、信号減衰の問題は予想よりも低かったという。減衰はビットエラーレートに直接関係しているが、ビットエラーレートはあらゆるデジタル通信システムの最終的な課題でもある。ミリ波は帯域幅が広く、使用可能な周波数帯も多いので、5Gの展開では重要な要素となる。5Gはまず、固定アクセスインターネットから利用が始まる可能性が高い。
73GHz帯で2Gbps以上のデータレートも
Nokiaは2017年に、いくつかの実証実験のテスト結果を公表した。そのうちの1つによると、73GHz帯では、最大160mの通信距離で1Gビット/秒(Gbps)、約60mまでは2Gbps以上のデータレートを実現できることが分かったという。なお、拡張モバイルブロードバンド(eMBB)通信やその他のサービスに最低限必要となるダウンロード速度は1Gbpsである。
Samsung Electronicsは、28GHz帯(帯域幅は800MHz)でテストを実施した。このテストでは、時速110kmで移動するモバイル機器で1.2Gbpsのデータレートを達成したという。移動するターゲットに遅れずにデータ伝送できたことで、ビームステアリングの有効性が実証された。今回のテストは屋外の見通し線実験だったため、屋内および車内でのミリ波帯通信にはまだ課題が残るが、見通しは明るいという。
NIのWong氏は、Brooklyn 5G Summit後にEE Timesが実施したインタビューで、「着色ガラスのウィンドウに関しては、今もなお問題が残っている」と語った。Samsungの報告書によると、「着色ウィンドウが使用された建物では、現在のセルラー周波数帯である6GHz以下の帯域でも、電波が非常に通過しにくい」という。
この問題に関しては、建物付近や内部に設置されたスモールセルが答えになるかもしれない。スモールセルはネットワーク容量を大幅に増やすことができる。さらに、スペクトル効率やエネルギー効率を高めることも可能だ。Samsungは報告書の中で、「ミリ波帯での接続範囲の問題に対しては、スモールセルまたはフェムトセルが答えになる」と述べている。
ただし、残念ながら、光ファイバーネットワークが整備されていない場所でネットワークにスモールセルを接続するにはコストが掛かる。「Future X Transport: Integrated Access and Backhaul」というパネルディスカッションでモデレーターを務めたAT&TのArun Ghosh氏は、この課題を取り上げた。この課題については、IAB(Integrated Access and Backhaul)を使うことで解決できるかもしれない。「IABは、マルチホップ無線ネットワークを生成できる可能性がある」(Ghosh氏)
まだ課題は残っているものの、ミリ波の実験では有益な結果が得られている。「ミリ波の性能に驚いている。2018年内にも5Gを実用化したい考えだ」(Ghosh氏)
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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