官能の人工知能 〜深層学習を最も分かりやすく説明するパラダイム:Over the AI ―― AIの向こう側に(22)(2/10 ページ)
深層学習を正しく理解するのは困難を極めます。ですが、あるパラダイムで考えると、大変に分かりやすくなるのです。そのパラダイムとは、これまであらゆるテクノロジーの進化と発展をけん引してきたと言っても過言ではない、最も偉大なるコンテンツ――そう、「エロ」です。【追記あり】
前段その2
しかし、私は、もう1つの仮説として、以下のようなことを考えています。
個人的なエロの嗜好性のマッチングに始まり、コンビニでの購入、その保管(例:ベッドの下)、そして廃棄(例:廃品回収日に、玄関の前にエロ本を積み上げる勇気(?))に至るまで、そこには、「エロ本の『ライフサイクル』としての様式美」があるのではないか ―― と。
ネットのない時代においては、エロ本には、その本の価値だけでなく、その所有者に対するリスペクトがありました(エロ本を友人に貸せる人間は「勇者」で、借りる人間は「ヘタレ」)。
また、エロ本には、当時、画像としての制約(いわゆる、モザイクなどの画像処理)が加えられており、そこに一種の「制約としての官能」があったのです。
―― それは、あたかも、俳句が5・7・5の語句の中に、1つの世界観をパッケージするのと同様の、情報圧縮技術です。
【その2】
少し前、嫁さんと長女(19歳)に質問をしました。
質問:ボーイズラブ(BL)は好きか? 今、好きでないなら、今後、後発的に好きになれる可能性はあると思うか?
2人の解答は以下の通りでした。
嫁さん:「その可能性は絶無に近いと思う。もし、世の中で、BLが唯一の愛の形というのであれば、可能性はあるかもしれないが、私の世界はそうなってはいないから」
長女(19歳):「私は愛に対してこれといった信念はないので、世の中のマジョリティーがBLの愛を受けいれるようになれば、私もそこに「流される」という自信はある」
江端:「ほう。ちなみにマジョリティーって、どれくらい?」
長女:「6割くらいかな」
ここまで読んできて、「一体何の話……? ここってテクノロジーの記事が読めるサイトだよね?」と不安になってきた方、ご安心ください。大丈夫です。
これは、EE Times Japanが提供する、連載「Over the AI ――AIの向こう側に」の第22回で、今回のテーマはニューラルネットワークの、特に「深層学習(後半)」に関するものです。
冒頭の2つの話は、今回の深層学習を理解する上で、非常に重要な示唆になっています。
なぜなら、今回私は、恐らくAI技術に関する解説としては、人類始の試みとなる、
―― 深層学習を、「エロ本」や「BL」のパラダイムから解説する
に挑戦してみたいと思っているからです。
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