写真フィルム技術で理想の音を、富士がスピーカー開発:クリアでキレのある自然な音(2/2 ページ)
富士フイルムは2018年6月14日、新たなスピーカー技術である「φ(ファイ)」を開発したと発表した。同技術は、同社が独自開発した電気音響変換フィルム「B.E.A.T.」をスピーカーの振動板に採用。このスピーカーユニットを直方体の4面に設置し、スピーカーを中心とした360度全方向に均一な音場を形成できることが特長だ。
360度全方向に自然な音場を形成
「φ」搭載スピーカーでは、「B.E.A.T.」スピーカーユニットを角柱の4側面にそれぞれ設置することで、水平面で360度全方向に音を放射するスピーカー構造を採用。これにより、幅広い音域で均一な音の広がりを持たせ、自然界の音が持つ「点音源・全指向性」の特性に近い自然な音場感を実現した。
アコースティックギターのキレのある音色を再現
試聴会では、「φ」搭載試作スピーカーをメインとして、サブウーファーを追加した2.2チャンネルシステムでデモを行った。デモを行ったオーディオシステムの内、CDプレーヤー、プリアンプ、チャンネルデバイダーとサブウーファーは、市販の他社製品を組み合わせ、「φ」搭載スピーカースピーカーおよび、スピーカーを駆動するパワーアンプは同社試作品となっている。
全8曲の試聴曲は、アコースティックギターのトリオ演奏やバイオリン・ピアノ独奏曲、声楽、ジャズ、ポップスなど幅広いジャンルから構成。この試聴で筆者が特に印象に残った点として、アコースティックギターの弦をかき鳴らす力強いサウンドや、ジャズドラムが浮かび上がるような音場形成、ピアノのリアルな打鍵音や残響音の自然さなどがあった。
「φ」搭載試作スピーカーについて、今後のビジネス展開は「全くの未定」(同社担当者)。今回の展示によって来場者のフィードバックを得て、さらなる音質のチューニングやビジネスの方向性を探っていくとして、「スピーカーユニットなどの部材、『φ』という技術、それとも富士フイルムが最終製品まで開発するか、まだどのレベルで事業化を行うか分からない部分があるが、来場者やオーディオ業界他社の反応を見て考えたい」とした。
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