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Raspberry Pi搭載CPUの変遷にみた「上手なチップ開発術」この10年で起こったこと、次の10年で起こること(26)(3/4 ページ)

今回は、シングル・ボード・コンピュータの代表格である「Raspberry Pi」に搭載される歴代のCPUチップを詳しく観察していこう。現在、第3世代品が登場しているRaspberry Piは、世代を追うごとに、CPUの動作周波数が上がり、性能がアップしてきた。しかし、チップを観察すると、世代をまたがって同じシリコンが使われていた――。

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どうやって性能を高めたのか?

 図2は、前モデルPi 3(左)とPi 3 Model B+のプロセッサの様子である。旧モデルはモールドで覆われたBCM2837が採用され、新モデルはリッドカバーが付いたBCM2837B0が採用されている。ベースチップ名は同じだがBバージョンとなった。リッドを外すとパッケージに直接チップの回路面(チップは片面に回路を形成する)を貼り合わせるフリップ実装と呼ばれる方法が用いられていることが確認できる。


図2:「Raspberry Pi 3 Model B」(左)と「Raspberry Pi 3 Model B+」(右) (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 図3は、両チップの開封の様子である。旧モデルのBCM2837にはBroadcomの社名ロゴとチップが開発された西暦年を示す「2014」が記載されている。一方、新モデルには「2017」という西暦年が刻まれていた。図3の左から3個目は、薬品を使って開封したチップの様子である。チップサイズは測長の結果、全く同じだと確認された。旧チップはチップ周辺にあるパッド(PAD)と呼ばれる外部(パッケージの端子)に接続する端子しか存在していない。パッドとパッケージ間はワイヤーで接続されている。一方、新チップはチップのほぼ全面にボール状の端子があり、パッケージに直接接続されるバンプ(Bump)という方式がとられている。ボールを形成するためにベースチップの上に配線層を付加し、配線をボール部まで持ってくる加工が必要だ。その分、コストは若干上がることになる(多くの先端プロセッサはこの方法を用いている)。


図3:「BCM2837」(上)と「BCM2837B0」(下)のチップ開封の様子 (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 図3の最右は2つのチップの配線層を剥いで下部の回路の形状を比較したもの。BCM2837とBCM2837B0は基本的には同じシリコンをベースに持つことが確認できる。ただし、チップの回路パターンは左右が反転されている。

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