EV開発から学生は何を得るか――知識、経験、そして:学生フォーミュラ2018プレビュー(1/2 ページ)
「全日本 学生フォーミュラ大会」(以下、学生フォーミュラ)というイベントはご存じだろうか。自動車技術会が主催するこのイベントは、その名が示す通り18歳以上の学生が自らの手で構想、設計、製作したフォーミュラカーの“完成度”を競い合う、モノづくりのコンペティションだ。
「全日本 学生フォーミュラ大会」(以下、学生フォーミュラ)というイベントはご存じだろうか。自動車技術会が主催するこのイベントは、その名が示す通り18歳以上の学生が自らの手で構想、設計、製作したフォーミュラカーの“完成度”を競い合う、モノづくりのコンペティションだ。
2003年から開催されている学生フォーミュラは、2018年で第16回大会となる。同大会では、第1回大会(2003年)から主たる審査クラスとして続くICV(内燃機関)と、第11回大会(2013年)から正式に審査クラスとして追加されたEV(電気自動車)の、2種類の駆動形式が認められている。
本稿では、自動車技術会が2018年7月4日に開催した同イベントの記者向け説明会の内容と、関東圏で唯一EVクラスに参戦する神奈川大学の動向をお伝えする。
ただ速さを競うだけでなく、ビジネスのロジックも審査対象に
説明会の前半では、第16回大会の実行委員長を務める日産自動車の玉正忠嗣氏が、大会概要を紹介した。
学生フォーミュラは、学校単位の学生チームが主体となって独自のレースカーを開発するモノづくりコンペティション。しかし、ただ速いレースカーを開発し走行性能だけを競う大会ではなく、学生チームが架空の「レースカーを開発するベンチャー企業」として想定のもと、説得力のある販売戦略や量産を仮定した場合のコスト管理、マシンのデザインに優位性があるか、といった点で書類審査やプレゼンテーション審査が設けられている。総合順位は、書類審査やプレゼンテーションを含めた「静的審査」と、マシンの運動性能を競う「動的審査」の2つの観点から決定される。
また、基本的なレギュレーションは世界で共通化されており、米国ではFomula SAE、英国ではFormula Studentと、Formula SAEシリーズは世界8カ国10大会で開催されている。さらに、同様の趣旨の競技会が中国やインドなどでも行われており、自動車産業におけるエンジニア養成の場としてグローバルで認められているといえる。
車両レギュレーションの観点では、オープンホイールでコックピットがカウルに覆われていない1人乗りフォーミュラカーの開発を求めている。ICVクラスでは排気量710cc以下の4サイクルエンジンを搭載し排気音量が所定条件で110dB以下というレギュレーション。EVクラスではバッテリー供給電力80kW未満で最大公称作動電圧が600Vdc以下、エネルギー回生が認められておりモーター搭載数も制約なしと、自由度の高いレギュレーションが設定されている。
玉正氏は、EVクラスの車両レギュレーションについて「モーター搭載数に制限がないため、EVクラスでは4輪駆動のクルマが多い。EVの技術トレンドから、学生フォーミュラでも高電圧の利用を許容しているが、その分安全規定も高く設定している」と説明する。
EVクラス安全規定の一例を挙げると、アクセルペダルポジションセンサーは2系統を設置し、センサーの電源と出力線はそれぞれ独立であることや、バッテリーを格納する「アキュムレータコンテナ」製作にあたり材質や厚み、加工方法に制約を課している。また、大会本番での車検において車両のレギュレーション適合が厳密に判定され、車検不通過の場合は動的審査に参加できない。EVクラスでは、基本状態での絶縁や回路構成の確認、車両に水を2分間散布し雨天時の絶縁を確認する「レインテスト」といった電装に関する車検が追加で実施される。
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