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シーメンスとメンターの統合から1年、その成果は懐疑的な意見も多かったが(2/3 ページ)

Siemens(シーメンス)は2017年3月に、Mentor Graphics(メンター・グラフィックス)の買収手続きを完了させた。この合併買収は、エレクトロニクス業界にどのような影響を及ぼしたのだろうか。

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「デジタルツイン」の加速に向けて

 Kaeser氏が指摘するように、Siemensは、物理的世界と機械的世界をシミュレーションすることが可能であると実証するために、Mentorを買収したのではないかとみられる。

 Kaeser氏は、「Siemensにとって、シミュレーションが必要なのは機械的世界だけではないということを理解するのに、長い時間がかかった。産業や業界の融合によって、電気システムの小型化を促したことから、システムの小型化に取り組む場合は、半導体分野へと進むことになる」と述べる。小型化システムのシミュレーションには、半導体のシミュレーションが必要だ。そこでMentorの技術が生きてくるのである。

 Hemmelgarn氏はKaeser氏の言葉を繰り返すように、SiemensによるMentor買収の目的について「物理世界における最良の仮想表現を実現することだった」と述べた。いわゆる「デジタルツイン」としても知られるプロセスによって、顧客はシステムが構築される前に、物理的な片割れ、つまりは実際の製品の性能特性を把握および予測できることになる。


「デジタルツイン」の概念 出典:Siemens(クリックで拡大)

 Hemmelgarn氏は、ソフトウェア製品の複雑性が高まるにつれ、「企業にとって、製品の開発と実証のプロセスが、より難しくなっている」と指摘した。業界の混乱に素早く対応する一つの方法として、「デジタル環境を活用すること」がある。企業は、物理的なプロトタイプやアセットを開発する前に、(製品と生産システムプロセスの)設計を仮想世界で「試して証明する」ためのプロセスを構築せざるを得ない状況にあるとHemmelgarn氏は説明した。

積極的なM&Aを行うSiemens

 MentorのRhines氏は「Siemensは有言実行の企業である」と強調した。Siemensは過去12カ月間にわたり、研究開発(R&D)スタッフに対する投資と一連の買収を行うことで、5G(第5世代移動通信)からアナログ設計、機械学習、さらにはISO 26262の認証まで、幅広い主要技術を社内に取り込んだ。Rhines氏によると、Mentorの元社員の定着率は高い他、R&Dスタッフの数の割合は約22%に上昇したという。MentorがSiemensに買収されて以降、さまざまなIC設計部門で15%から35%の成長がみられたようだ。

 Siemensはここ最近、積極的な買収を行っている。買収した企業の一つが、Austemper Design Systemsだ。革新的なIC機能安全技術を手掛ける同社は、2018年6月22日にSiemensに買収されたばかりだ。SiemensはSarokal Test Systemsも買収したが、この企業はプリシリコンもしくはポストシリコンのテスト中に4G(第4世代移動通信)や5Gの設計を検証できるようになる技術を手掛けている。

 さらに、Solido Design Automationは、機械学習をベースにし、変化を意識した設計や特性を持つソフトウェアを提供している。また、Infolyticaを買収したことで、Siemensは低周波シミュレーションに関するソフトウェアやドメインの専門知識を手に入れ、電動機、ジェネレータ、電磁気装置の設計に対応できるようになった。最後に挙げるTass Internationalは、シミュレーションソフトウェアのベンダーとして、自動車産業にエンジニアリングおよび試験サービスを提供している。


Mentorのチェアマン兼CEOであるWally Rhines氏(左)と、Siemens PLM Softwareのプレジデント兼CEOであるTony Hemmelgarn氏

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