米国、半導体への投資を増加する動き:中国を警戒か(1/2 ページ)
米国の国防総省(DoD:Department of Defense)は、エレクトロニクス関連の幅広い取り組みに22億米ドルを投じるプロジェクトを推進中だという。2018年7月23〜25日(米国時間)にカリフォルニア州サンフランシスコで開催された「Electronics Resurgence Initiative Summit 」で明らかになった。
半導体への投資を増加する動き
米国の国防総省(DoD:Department of Defense)は、エレクトロニクス関連の幅広い取り組みに22億米ドルを投じるプロジェクトを推進中だという。2018年7月23〜25日(米国時間)にカリフォルニア州サンフランシスコで開催された「Electronics Resurgence Initiative Summit 」で明らかになった。同イベントでは複数の登壇者らが、「ムーアの法則」の鈍化を認めつつ、CMOSプロセスの微細化に代わるさまざまな技術によって、チップの進化は続くという同じ見解を示した。
このイベントは、今後5年にわたり15億米かけて進められる一連の研究プロジェクト「Electronics Resurgence Initiative(ERI)」を紹介するために開催された。米国はERIを通じて、ムーアの法則の鈍化と中国の台頭という、2つの“課題”に挑むことを目指す。
DoDにおいて、システムエンジニアリング担当の臨時国防副次官補であるKristen Baldwin氏は「われわれは共通のニーズを連携させ、次世代半導体をけん引しようとする中国の野望に立ち向かう。現在、わが国の半導体エコシステムは脅かされ、半導体技術に対する障壁は引き下げられている。DoDは、そうした傾向を覆すことを狙う」と述べた。
米ホワイトハウスは、4つの目標を掲げたDoDによる5カ年プロジェクトの資金として、22億米ドルを要求している。この要求が通れば、ERIのようなプロジェクトにさらなる資金が投じられることになり、軍用および民生用のソリューションを開発するメーカーが連携してイノベーションを実現するための開発センターを設立できる。政府にとっては、信頼できるチップ供給へのアクセスを拡大でき、さらに、AI(人工知能)用プロセッサ、精密なナビゲーションなどに関連した、軍用に向けた最先端技術の開発プロジェクトを加速できる可能性がある。
DoDは、2018年8月に最初のチップイノベーションセンターについて発表する予定だ。チップ設計を迅速に、そして安全に進められる場所になるとしている。Baldwin氏によると、DoDは、信頼できるチップ供給を確保および検証する新たな方法に関するアイデアを既に募集中であり、データサービスや医療エレクトロニクスといった領域での商業的な差別化要因として安全基準を推進しているという。
現時点では、米国軍は14nmプロセス技術と2.5D(2.5次元)チップパッケージング技術の信頼できるソースに欠けている。いずれも、ハイエンドの商業製品に幅広く用いられている技術である。
国防総省国防高等研究事業局(DARPA)でERIを主導するWilliam Chappell氏は、「米ベル研究所がトランジスタを開発して以降、DoDが最新技術へのアクセスを持たないのは初めてのことである。崩れてしまったメカニズムを再び一つにまとめ上げる必要がある。それが、今回われわれがこの場に一堂に会した理由の一つだ」と述べた。
Intelのあるエグゼクティブは、信頼できるソースに対して、米国政府が課す制限が多すぎると指摘した。例えば、製造施設の全従業員を米国市民にすることが挙げられる。GLOBALFOUNDRIESのあるマネジャーは、同社がニューヨークに置く14nmプロセスを導入した製造施設においては、このプロセスを共同開発したSamsung Electronicsとの提携を解消することは難しいと述べている。
Mentor GraphicsのCEOであるWally Rhines氏は、今日のEDAベンダーが供給し得るセキュリティ機能の中には、商用ユーザーがお金を払いたくないようなものもあると指摘した。同氏は基調講演の中で「そのような状況を変えるのは、かなり大変なことだと思われる」と述べた。
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