「シュタインズ・ゲート」に「BEATLESS」、アニメのAIの実現性を本気で検証する:Over the AI(24)番外編 これがエンジニアの真骨頂だ(6/9 ページ)
前回で最終回を迎えた「Over the AI」ですが、番外編として、私がどうしても、どうしても、書きたかったコラムをお届けすることにしました。SFやアニメに登場するAI(人工知能)の実現性です。今回は、「シュタインズ・ゲート」や「BEATLESS」に登場するAIを取り上げ、エンジニアとして、それらの実現性を本気で検証してみました。
人型ロボットを管理する“超高度AI”
次に、BEATLESSについて説明します(名作です)。
これは、100年後の未来のお話です。
22世紀初頭、100年あまりで急激に進行した少子高齢化により労働力は大幅に減少しますが、それをhIE(Humanoid Interface Elements)と呼ばれる人型ロボットに任せることで、効率のよい社会が実現され、生活は以前より豊かになっていました。
そんな中、hIEの行動管理を行う超高度AI「ヒギンズ」を管理・所有する会社の研究所から、特殊な能力を有する5体のhIEが逃亡し、自らの行動規範に従い動き始めます。
この話のテーマは、「未来の人間と機械(AI)との関係性」を問うものですが、今回は、その話は全部すっ飛ばして、AI技術に特化して、その実現可能性の検討をしてみたいと思います。
まず、このアニメ(原作は小説)が想定する世界は、22世紀の人口減少を支えるほどのhIEが存在することから、人口の2〜3割以上、下手すると半分がhIEで占められている世界を想定してもよいと思います。
これらの膨大なhIEを、人間と全く同じように振舞わせているものが、クラウドコンピュータである、超高度AI「ヒギンズ」です。
さらに、この超高度AI「ヒギンズ」は、特別な機能を有する5体のhIEの設計と製造を提案します。表向きの理由は、緊急時に自律移動可能な「ヒギンズ」のバックアップということになっていました ―― これが「ヒギンズの娘たち」です。ところが、それぞれの娘たちには、それぞれ異なる目的が与えられており、研究所の爆破時に逃亡し、それぞれの目的に応じて行動を開始します。
しかし、私には、ヒギンズの娘たちの行動規範が、どうにも良く理解できていないのです(今も、何回もアニメを見直しています)。
ヒギンズの娘たちは、それぞれの目的とオーナーの命令に従って行動しますが、その結果、それぞれの娘たちは、自分で装備した最新鋭の武器を使って敵対する関係となります。
さらに、彼女らは、オーナーの命令に従っている風を装いながら、その実、オーナーにそのような命令を出させるように振る舞います。これが、アナログハックです(後述します)。
これらの彼女たちの行動規範と立ち位置を、私なりに理解した図を以下に記載します。
さて、まあ、ヒギンズの娘たちについては、これ以上の検討は差し控えます。そもそも、彼女たちは物理法則を無視するような運動神経や破壊兵器を具備し、自らを超高度AIにまで昇華させることのできるhIEです。ここまでSFな話を、現状の技術から語るのは、もはや無理だからです。
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