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パナソニックで見た! 電力線通信のいま(事業編)屋外や三相三線での利用を目指す(1/2 ページ)

既設の電力線でデータ通信も行う技術、「電力線通信(PLC)」。高速・長距離を特長とする「HD-PLC」はパナソニックが提唱する国産のPLC通信技術だ。事業編となる本稿では、HD-PLCを活用した各種製品やサービス、そしてHD-PLCのさらなる応用拡大を目指した研究体制にフォーカスする。

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 既設の電力線でデータ通信も行う技術、「電力線通信(PLC)」。

 PLCにはさまざまな規格が存在するが、高速・長距離を特長とする「HD-PLC」はパナソニックが提唱する国産のPLC通信技術だ。信号変換にWavelet OFDM(直交周波数分割多重方式)を採用し、物理速度240Mビット/秒(bps)でマルチホップによる数キロ程度の通信を提供する。

 前編記事となる技術編では、HD-PLCを構成する基礎技術や最新となる第4世代HD-PLCのコアテクノロジーを紹介した。続く本稿では、HD-PLCを活用した各種製品やサービス、そしてHD-PLCのさらなる応用拡大を目指した研究体制にフォーカスする(前編記事:パナソニックに聞く! 電力線通信のいま(技術編))。

豊富なバリエーションをそろえるPLCアダプター

 コンセントに接続し電源を入れるとネットワークを構築する「PLCアダプター」は、PLCの中核製品だ。パナソニックでは2018年8月より、産業用機器組み込み型PLCデバイスの開発製造受託サービスを開始しているが、汎用PLCアダプター「DA-PU100」シリーズや工場や建設現場などでの設置を想定した「WPN701x」「WPN711x」シリーズもとりそろえ、さまざまな用途に対応する製品ラインアップを擁している。

左:汎用PLCアダプター「DA-PU100」シリーズ 右:「WPN701x」「WPN711x」シリーズ(クリックで拡大)

 どちらの製品も、物理速度240Mbpsと最大距離200m程度(マスター・ターミナル間もしくはターミナル・ターミナル間)の通信を提供。最大10ホップのマルチホップ機能に対応し、マスター1台あたり最大1024台までのターミナルと接続できる。また、AES(Advanced Encryption Standard)128ビットの暗号化を行っており、ネットワークのセキュリティを確保している。

 産業向けとなる汎用アダプターのDA-PU100シリーズは、AC100〜240V、50Hz/60Hzの電力線に接続し、コンセントに接続するタイプ、分電盤など端子台に接続するタイプの2種類の接続形態に対応する。

 同製品では、イーサネットに加えてRS-485やUSBをサポート。制御機器に多く利用される各種インタフェースをサポートすることで、無線では実現が困難とされている大きな工場やビル内でのIoT(モノのインターネット)環境の構築に役立つという。また、−25〜60℃の使用温度範囲やIP5Xの防じんに対応し、現場で必要とされる耐環境性能を備え、マスターが故障した場合にセカンダリーマスターが自動的に通信経路を再構築するセカンダリーマスター機能を搭載している。


セカンダリーマスター機能のイメージ 出典:パナソニック

 その他、PLCデバイスはモジュールやベースバンドLSIの形態でも提供され、ミツミ電機や東朋テクノロジーなどがモジュールを、メガチップスやロームがLSIを供給する。配線についても通常の電力線や同軸ケーブルの他、パナソニック製アンダーカーペット配線システム「パナトラック」といったユニークな配線材もHD-PLCに対応しており、「店舗や病院など、電源ケーブルや保護カバーによる床の段差が好ましくないところにパナトラックが利用されている。低コスト・省施工性が特長な配線材だが、HD-PLCを活用することで電力と共に有線通信も提供できる」(パナソニック)とする。

左:HD-PLCモジュールとベースバンドLSI 右:薄型床配線材「パナトラック」(クリックで拡大)

マルチホップでパナソニックの事業所がまるっとつながる

 パナソニックでHD-PLCの研究開発拠点となる福岡事業所では、同技術の実証として事業所内の各種機器を接続しネットワークを構築、機器の管理に活用している。


パナソニック福岡事業所内に構築されたHD-PLCネットワーク(クリックで拡大)

 同事業所内に建設された一戸建ての「HD-PLC」検証ハウスに、マスターアダプターを配置。事業所内の長辺約170m、短辺約80mのエリアに点在する監視カメラや屋外照明設備、Wi-Fiアクセスポイントなどを複数のターミナルアダプターを用いたマルチホップで接続する。

左:HD-PLCで接続された景観照明 右:監視カメラとWi-Fiアクセスポイント(クリックで拡大)

 「HD-PLC」検証ハウスでは各ターミナル間の物理速度を確認することができ、「各ターミナル間がどのくらい安定して通信しているかを示す指標」(パナソニック)として用いているという。「物理速度の大小でネットワークの安定性が一目で分かるため、安定したネットワークの構築に役立っている。物理速度が小さい部分ではアダプターを追加することで、改善が可能だ」とする。


福岡事業所内のHD-PLCネットワーク物理速度(クリックで拡大)

パナソニックセンター東京に設置された群衆誘導システム「スマートガイド」(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 パナソニックでは、福岡事業所の他にも各所でHD-PLCの実証実験を実施しており、2017年10月には同社佐賀工場で工場内の三相電力線への適用を目指した実証、2018年4月からは「Panasonic Stadium Suita」(パナソニック スタジアム 吹田)とパナソニックセンター東京で大規模施設における照明設備制御の実証を開始している。

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