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環境発電で動作するコントローラー、ルネサスがSOTBを初適用5μAの電流で駆動可能(1/2 ページ)

ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は2018年11月14日(ドイツ時間)、ドイツ・ミュンヘンで開催中の「electronica 2018」(2018年11月13〜16日)で、IoT(モノのインターネット)機器向けにエナジーハーベスト(環境発電)で得たエネルギーで駆動できる組み込みコントローラー「R7F0E」を発表した。2019年7月にサンプル出荷を開始し、同年10月より量産を開始する。

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20年にわたり研究開発を続けたSOTBプロセスを採用

 ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は2018年11月14日(ドイツ時間)、ドイツ・ミュンヘンで開催中の「electronica 2018」(2018年11月13〜16日)で、IoT(モノのインターネット)機器向けにエナジーハーベスト(環境発電)で得たエネルギーで駆動できる組み込みコントローラー「R7F0E」を発表した。2019年7月にサンプル出荷を開始し、同年10月より量産を開始する。

 R7F0Eは、ルネサスが約20年にわたり開発を進めてきたSOTB(Silicon On Thin Buried oxide)プロセスを採用した初めての製品となる。同プロセスを適用したことで、3.0V動作時で20μA/MHzのアクティブ電流、150nAのディープスタンバイ電流を実現した。ルネサスによれば、これらは従来の低電力マイコンの10分の1ほどの消費電力だという。


ルネサスのMichael Hannawald氏

 ルネサスのインダストリアルソリューションビジネスユニットのシニアバイスプレジデントを務めるMichael Hannawald氏は、「IoT(モノのインターネット)機器では高性能のMCUを駆動する必要がないことが多く、バッテリーを使わないエナジーハーベストへのニーズが高まっている」と語る。エナジーハーベストによる電力のみで駆動することを目的としたR7F0Eは、わずか5μAの電流と、外付けの蓄電デバイスに50μFの容量があれば駆動できる。

 R7F0EのCPUコアは、32ビットのArm「Cortex M0+」を採用。動作周波数はブーストモードで64MHz。最大1.5MBのフラッシュメモリと256KBのSRAMを搭載している。

 SOTBは、アクティブ時とスタンバイ時、両方の消費電力を最小限まで削減するプロセス技術として、ルネサスが独自に開発を進めてきたもの。ウエハー基板上の薄膜シリコン層の下に、埋め込み酸化膜層(BOX:Buried Oxide)を形成したSOI構造と、バルクCMOS構造を組み合わせた、非常に特殊な構造をしている。


「SOTB」の構造。バルクCMOS構造と組み合わせている(クリックで拡大)

 薄膜シリコン層に不純物を注入する必要のない、ドーパントレスチャネル構造によって、不純物の揺らぎを抑制する。それによって、しきい値ばらつきを抑え、超低電圧でも安定した動作を実現できるという。一方で、BOXを薄くしたことで、より高精度に基板バイアス制御ができるため、リーク電流を削減でき、待機電力を抑えることができる。

 R7F0Eには、電力を効率よく使うために、コンデンサーや二次電池といった外付けの蓄電デバイスなどを管理する「エナジーハーベストコントローラー(EHC)」が搭載されている。これによって、電圧安定化回路を使うことなく発電素子にR7F0Eを直接接続できるので、起動時に突入電流が発生しにくくなる。さらに、14ビットA-Dコンバーター(32kHz動作)も、R7F0Eに作り込んでいる。このA-Dコンバーターは消費電流がわずか3μAと非常に低いため、常に動作し続けることができ、常時センシングすることが可能になる。これによって、間欠的なセンシングでは見逃していたかもしれないイベントを、捕捉できるようになる。

左=「エナジーハーベストコントローラー(EHC)」によって、起動時の突入電流に起因する誤動作を防ぐ/右=内部に作り込んだ、消費電流が3μAの14ビットA-Dコンバーターによって、常時センシングが可能になる(クリックで拡大)

 R7F0Eは、エナジーハーベスト以外に、消費電力を極限まで低くしたい機器を設計する場合にも使うことができる。

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