ArmがハードウェアIP「Cordio」の開発を中止:ソフトウェア「Cordio BLE」に専念
EE Timesが入手した情報によると、Armは、NB(Narrow Band)-IoTベースのLPWAN(Low Power Wide Area Network)向けハードウェアIP(Intellectual Property)「Cordio」の開発を中止し、ソフトウェアスタック「Cordio BLE(Bluetooth Low Energy)」の開発に専念するという。
EE Timesが入手した情報によると、Armは、NB(Narrow Band)-IoTベースのLPWAN(Low Power Wide Area Network)向けハードウェアIP(Intellectual Property)「Cordio」の開発を中止し、ソフトウェアスタック「Cordio BLE(Bluetooth Low Energy)」の開発に専念するという。
Armは過去数週間のうちに、スウェーデンのLund(ルンド)と英国のLoughborough(ラフバラ)のオフィスを閉鎖し、Cordioの開発を中止して開発チームの人員を削減した。LundオフィスはNB-IoTソリューションを、LoughboroughオフィスはISP(Image Signal Processor)をそれぞれ開発していた。
ArmのシニアスポークスマンはEE Timeに対し、「Armは、IoTデバイスIP戦略を再構築し、LPWAN技術とPAN(Personal Area Network)を含むArm CordioハードウェアIPの開発を中止する計画だ。BLEソフトウェアは、今後も当社の主要な戦略的資産として継続する。BLEソフトウェアチームと同技術は、IoTエンドデバイス向けOS『Mbed OS』の採用をサポートするIoTサービスグループ(ISG)に統合する予定だ」と語った。
CordioはArmの有名な戦略で、NB-IoTベースのLPWANアプリケーション向け省電力無線接続IPと、無線PAN向けRF-to-アプリケーションを提供する。
Armは3年程前に、Bluetoothハードウェアとソフトウェアで構成するCordioポートフォリオに向けて、Bluetooth技術を手掛ける米国のWicentricとSunrise Micro Devicesを買収した。その2年後、プラットフォームの開発に向けて、さらにNB-IoT技術を手掛けるスウェーデンのMistbaseと英国のNextG-Comを買収した。
しかし、Armは最終的に、同事業の達成が困難だと判断したと思われる。Bluetoothハードウェア市場は、多くの企業が参入している上に、QualcommのCSRチップセットがほぼ独占していて、新規参入の余地はない。Bluetoothは、UART(汎用非同期送受信回路)と非常によく似た汎用インタフェースで、大型のシステムソリューションの一部として採用される場合を除いてスタンドアロンのコモディティIPとして使われることはほぼない。
180人を解雇
Armは2018年9月に、世界各国で計180人を解雇すると発表した。EE Timesはこれを受け、この一連の構造改革によって何が変わるのかを尋ねた。Armのシニアスポークスマンは、「資産と技術を継続して評価し、成長戦略に向けて的確に分配していく」と語った。
同社は、「今後も、技術や資産、施設の展開場所や人材などを含めた取り組みを継続的に見直す予定だ」としている。
スポークスマンは、「いくつかの施設の閉鎖について検討しているが、コネクティビティ戦略に重点を置く方針に変更はない」と付け加えた。同社は2018年6月にIoTコネクティビティーソリューションを提供するStream Technologiesを買収したが、この買収もIoTプラットフォーム「Pelion」の開発の一環であると説明した。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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