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もっと積極姿勢を見せてほしい日系パワー半導体メーカー大山聡の業界スコープ(12)(1/2 ページ)

今回は、パワーデバイス市場について述べてみたいと思う。というのも、2018年11月26日、デンソーがInfineon Technologies(以下、Infineon)に出資すると発表したことが、筆者としては非常に気になったからである。

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デンソーがInfineonに出資した理由

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 本連載前回記事で、メモリ市場が調整局面に入っていることについて触れた。需給バランスの変動が大きいことがメモリ市場の特長で、2019年はマイナス成長が余儀なくされる見通しだ。その一方で、パワーデバイス市場は、当面堅調な伸びが見込まれる。そこで今回は、パワーデバイス市場について述べてみたいと思う。というのも、2018年11月26日、デンソーがInfineon Technologies(以下、Infineon)に出資すると発表したことが、筆者としては非常に気になったからである。

 デンソーのプレス発表によれば、今回の出資は次世代の車両システムの実現に向けた技術開発を加速させることが目的であるとしており、詳細なコメントは特に述べていない。出資比率は0.2%程度で、金額にして数十億円の規模に過ぎないが、これにはさまざまなメッセージが込められている、と筆者は感じている。

 Infineonは2018年5月、パワーデバイスの増産を目的に300mmウエハー対応の新工場を立ち上げると発表した。今後6年間で16億ユーロ(約2000億円)を投資し、2021年の生産開始を予定しているという。同社はパワートランジスタ市場におけるトップメーカーで、そのシェアは4分の1を上回り、2位以下を大きく引き離す実績を持っている。パワートランジスタは自動車や産業機器に多く採用されており、特に電動化が進む自動車業界では、IGBTやMOSFETといったパワートランジスタの需要がますます増える傾向にある。

ますます需要が伸びるパワーデバイス

 下のグラフは、パワートランジスタ市場の推移を示したもので、2017年まではWSTSの実績値、2018年以降は筆者が代表を務めるGrossberg(グロスバーグ)の予測値である。


パワートランジスタ市場の推移。2018年以降の値はGrossbergの予測値 出所:WSTSのデータを元にGrossbergが予測

 2018年は、2017年から15%ほど成長する勢いで伸びており、過去最高だった2011年の出荷実績を大きく上回ることが確実である。需給バランスもひっ迫した状態が続いているため、2019年、2020年も順調な成長が見込めるだろう、と筆者は予測している。

 主なパワートランジスタメーカーとしては、Infineon、ON Semiconductor、三菱電機、東芝、富士電機、STMicroelectronics(以下、ST)、ルネサス エレクトロニクスなどが挙げられ、日系企業が世界市場でも健闘している分野だ。だが、最近では中国でもパワートランジスタ事業を立ち上げようとする企業が増えつつある。中国ではDRAM、NAND型フラッシュメモリといったメモリ事業への積極的な投資が目立つが、EVに必要なキーデバイスであるIGBTやMOSFETに関しても、外資からの輸入だけに頼らずに国内生産を強化しよう、という動きが起こっているのだ。

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