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「テクノロジーで人体の限界を超える」 SEMICON講演ロボットから医療機器まで(1/3 ページ)

「SEMICON Japan 2018」では、「テクノロジーと身体の未来」をテーマにした「みらいビジョン フォーラム」が開催され、ロボットの開発などを手掛ける講演者たちが、テクノロジーとサイエンスをいかに活用して、未来の社会を実現するかについて語った。

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 2018年12月12〜14日にかけて開催された「SEMICON Japan 2018」では、数多くのセミナーが行われた。12月14日には、「テクノロジーと身体の未来」をテーマにした「みらいビジョン フォーラム」が開催され、ロボットの開発などを手掛ける講演者たちが、テクノロジーとサイエンスをいかに活用して、未来の社会を実現するかについて語った。

ベンチャー+大企業の組み合わせが鍵に


リバネスの丸幸弘氏

 最初に登壇したリバネス CEO(最高経営責任者)の丸幸弘氏は、未来の社会について「今あるビジネスの延長上にはない未来がやってくると、いわれている。例えば自動運転車が公道を走る未来。ドローンが飛ぶ未来。このような未来は想像できる。われわれは、自分たちが現在生きている社会の延長線上にはない未来を想像していかなければならない」と語る。

 「現在の企業は、PDCAを回すことに一生懸命だが、売り上げを上げることと、未来を作ることは別物だ。今までの改良、改善を超えたものを作らなければならない」(丸氏)

 同氏は、そのためには創業が重要で、とりわけ「ベンチャー+大企業」の組み合わせが鍵になると述べる。「ベンチャーには、失敗に耐えられる、新技術を柔軟に育てられる、既存事業のしばりがない、といった、大企業にはない特長がある。一方で、“情熱さえあれば、種は必ず育つ”ということを一番よく知っているのは大企業のはずだ」(丸氏)

 丸氏がCEOを務めるリバネスは、モノづくりやバイオ、AI(人工知能)、ロボティクスなど分野において、大企業とベンチャー企業が対等に議論できる場を作っているという。例えばモノづくりの分野では、研究者やベンチャー企業が持つ科学技術のタネを事業化につなげるプログラム「Tech Planter(テックプランター)」などを展開している。丸氏は、「世界を変えていくというビジョンとパッションの元、こうしたプロジェクトを進めている」と語った。

生体信号+ロボットで新たなテクノロジーを生み出す


メルティンMMIの粕谷昌宏氏

 次に登壇したのが、アバターロボットを手掛けるメルティンMMIで代表取締役を務める粕谷昌宏氏だ。小学校1年生の時に、既に「ロボット博士になる」と言っていた粕谷氏は、「自分がやりたいことをするには、自分の体はどう見ても有限である」と考え、工学と医療を組み合わせることを中学生くらいの時から考えていたという。

 粕谷氏は、サイボーグを「生体信号(電気信号)+人工的な体を組み合わせて、新たなテクノロジーを生み出すもの」と定義している。「どれだけよい道具があっても、それを使うのは人間、つまり体である。それ故、どこかのタイミングで、体がボトルネックになってしまうだろう。そこで、外界とやりとりする方法として生体信号に注目した」と、粕谷氏は話す。

 粕谷氏は、ロボットを「体の制約を超えるもの」「空間の制約を超えるもの」と考えている。「体の制約を超えるもの」を示すため、講演では、自身の両腕+ロボットアームという“3本の手”ではんだ付けをする粕谷氏自身の写真を披露した。自分の体が衰えた場合や、手や足などを失った場合でも、やりたいことができるようになればと同氏は述べる。「空間の制約を超えるもの」とは、つまり通信を介して遠隔操作できるという意味である。

 メルティンMMIは2018年3月、アバターロボットのコンセプトモデル「MELTANT-α(メルタント・アルファ)」を発表している。人の手が持つ器用さや繊細さを兼ね備えたロボットハンドを持つことが特長で、3本の指で約2kgの物を持ち上げることができるという。動作の遅延もほぼなく、2018年11月にアラブ首長国連邦のアブダビで開催された「ADIPEC(アブダビ国際石油展示会議)」では、モバイルネットワークを使い、米国のボストンにいる操作者が、ADIPEC会場にいるロボットを操作し、同じ動作をほとんど遅延なく行えるデモを披露した。

人間のような“手”を持つ「MELTANT-α」 出典:メルティンMMI(クリックで拡大)

 メルティンMMIは、同社のアバターロボットを低価格化し、徐々にコンシューマーの市場にも投入していく予定だ。MELTANT-αの発表を皮切りに、2019年にはMELTANT-αで得られたフィードバックを基に改善した「MELTANT-β」を発表し、2021年には本格的な市場投入を目指す予定だ。2023年には、災害現場、建設現場、介護現場、水中、宇宙空間など、どんな所でも使えるようなアバターロボットの実用化までこぎ着けたいとする。

 併せて、人間がサイボーグをどう使うべきか、危険な利用をどう未然に防げるのかなどを議論する、国際サイボーグ倫理委員会なども立ち上げるという。

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