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Intelの創業5年目(後編)、腕時計メーカーになったIntel福田昭のデバイス通信(174) Intelの「始まり」を振り返る(7)(1/2 ページ)

Intelの創業5年目となる1972年。この年で特筆すべきは、Intelが電子式腕時計の開発ベンチャーであるMicromaを買収し、子会社としたことだろう。

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創業5年目までの歩みを振り返る

 Intelの公式文書である「年次報告書(アニュアルレポート)」をベースに、Intelの創業当時の活動を創業年(1968年)から1年ずつ記述する連載の第7回である。前回と今回は、創業5年目である1972年の活動と業績を前後編でご報告している。今回は後編である。

 1972年の年次報告書(アニュアルレポート)には、創業から5年の歩みを「数字」で紹介しているページがある。一部を抜粋してご紹介しよう。具体的には、「総収入金額」「営業損益額」「従業員数」の推移を示す。5年で総収入金額は8764倍に増加し、従業員数は24倍に増加した。従業員1人当たりの総収入は365倍に増加したことになる。

 営業損益はずっと赤字が続いていた。創業5年目の1972年に初めて、黒字を計上した。なお最終損益は前年の1971年から黒字に転換しており、1972年は2年連続の最終黒字となった。


1968年(創業年)〜1972年における「総収入金額」「営業損益額」「従業員数」の推移。Intelの年次報告書(アニュアルレポート)を基に作成(クリックで拡大)

研究開発費/売上高の比率が15%に低下

 Intelの急激な成長をけん引したのは、非常に積極的な研究開発にあることは明らかだ。そのことは年次報告書の業績にも現れている。営業損益の赤字が最大になったのは創業2年目の1969年で、赤字額は191万2833米ドルである。同年の研究開発費は129万米3434ドルで、製品売り上げの3.5倍もの金額を研究開発に投じている。研究開発による巨額の赤字を認識した上で、将来の成長に賭けていることが理解できる。

 そして1972年の時点では、Intelは「賭けに勝った」ように見える。売上高は急伸し、損益は黒字に転換した。そして売上高に占める研究開発費の比率は、15.0%で過去最低の水準にまで下がった。この「15%」という研究開発費の比率は、技術開発主導型の産業である半導体業界では「高すぎず、かつ、低すぎない比率」だと言えよう。創業してからわずか5年で、売り上げに対する研究開発費の比率がここまで下がったのは、驚異的なことだ。


「研究開発費」と「製品売り上げ」「製品売り上げに対する研究開発費の割合」の推移。Intelの年次報告書(アニュアルレポート)を基に作成(クリックで拡大)

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